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2型糖尿病の子供は必ずしも太ってない

2型糖尿病は太っているイメージがありますが、子供の場合は必ずしも太っていません。メタ分析の論文(JAMA Nework Open 2022)が出ましたので、紹介します。

53論文、8942人のメタ分析です。肥満の定義ですが、多くの論文は年齢・性別BMI(体格指数、肥満指数)の95パーセンタイル値を採用しています。ただ、BMI30以上にしている論文や定義が記載されていない論文もあり、雑多です。

メタ分析の結果です。2型糖尿病の子供の肥満有病率は75.27%でした。糖尿病発症時の肥満有病率は77.24%でした。つまり4人に1人は太っていなかったのです。

肥満有病率はアジア人で64.50%とさらに低くなります。白人は89.86%と高くなります。人種差(あるいは環境差)は大きいようです。

BMI(体格指数、肥満指数)が基準範囲にあるのは、オセアニアで16.43%、アジアで13.95%であり、ヨーロッパで9.52%、南北アメリカで4.21%、中東で1.26%でした。

我が国では小児生活習慣病予防健診が行われていますが、肥満以外の糖尿病原因が分かって予防対策が精密になると良いですね。


令和5年2月3日

新しい血圧の薬の開発

降圧薬を重ねてもなかなか下がらない高血圧の人がいます。治療抵抗性高血圧と呼ばれていますが、多くはナトリウム貯留性高血圧です。

ナトリウム貯留に関連するのはレニン〜アルドステロン系です。アルドステロンを何とか抑えたいところです。

まず アルドステロン受容体拮抗薬です。アルドステロンの働きを抑えます。古くからあるアルダクトンAは望ましくない作用もあり、使いにくい薬でした。そこで、セララやミネブロのような副作用の少ない選択的アルドステロン受容体拮抗薬が開発され、使いやすくなってきました。

アルドステロン拮抗薬は良い薬ですが、血中アルドステロンを増やして良くない作用をもたらす可能性があります。そこで、新しい薬としてアルドステロン合成を阻害する薬が考えられました。

開発にあたっての問題点は、アルドステロン合成酵素がコルチゾール合成酵素と似ていることです(93%の相動性)。アルドステロン合成だけを抑え、コルチゾール合成を抑えない薬剤の開発は難しいとされてきました。その開発が進んでいます。

アルドステロン合成阻害薬 、バクスドロスタットの第2相試験の結果が発表されました(NEJM 2023)。1mg投与群で収縮期血圧が17.5mmHg、2mg投与群では20.3mmHg下がっています(偽薬は9.4mmHg低下)。血清カリウム値に注意する必要がありますが、その他に目立った有害作用はありませんでした。

開発が続いて薬になると良いですね。


令和5年2月3日

食事回数は3回/日が良い

食事回数や食事時間の間隔についての論文(Acad Nutr Diet 2022)が出ましたので紹介します。 

この論文では、米国全国健康・栄養調査(1999-2014)の成績を分析しています。データが揃っている40歳以上の24,011人を対象に、食事回数と全死亡・心血管死の関連をみました。食事調査は2回行っていますが、最初に行ったデータを使いました。

185,398人・年の観察期間中に4,175人が死亡、うち878人が心血管死でした。1日3食の人は男性で59%、女性で63%でした。朝食抜き、昼食抜き、夕食抜きの人は男性でそれぞれ19、22、8%、女性で19、21、7%でした。

1日3回食事をしている人に比べて、1回食の人は、全死亡で1.30(1.03-1.64)、心血管死で1.83(1.26-2.65)と死亡リスクが増加していました。 

朝食抜きの人は心血管死リスクが1.40(1.09-1.78)、昼食抜きの人は全死亡リスクが1.12(1.02-1.24)、夕食抜きの人は全死亡リスクが1.16(1.02-1.32)でした。 

3回食事をしている人の分析です。食事間隔が4.5時間未満の人は4.6-5.5時間の人に比べて、全死亡リスクが1.17(1.04-1.32)と増加していました。 

米国の成績ですが、食事は1日3回、食事時間の間隔をあけるのが良いようです。


令和5年1月30日

糖尿病の猫にもSGLT2阻害薬

これまで糖尿病猫には糖尿病の飲み薬がなく、食事療法とインスリン注射で治療されていました。食事療法はともかく、インスリン注射は飼い主にとってわずらわしい負担でした。

米国の話ですが、2022年12月に猫用のSGLT2阻害薬(尿糖を増やして血糖を下げる薬)が認可されました。私も知らなかったのですが、猫に限らず、動物用の糖尿病飲み薬の認可は初めてのようです。

認可されたのは、ベクサキャット(ベクサフロジン)です。ベクサキャットの有効率は高く、80%以上の糖尿病猫で血糖改善効果が認められました。

ベクサキャットを適切に使うためには、飼い主による観察(ケトアシドーシスなどの副作用チェック:食欲低下、活動性低下、嘔吐・下痢、歩けない座れない)も必要です。

ベクサキャットはフレーバーを付けた錠剤で提供されます。残念ながらインスリンを必要とする猫には使えません。日本でも使えるようになると良いですね。


令和5年1月27日

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