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ソーダ税

甘味飲料に税金をかけると消費量が減るという話です。

米国ではバークレイとフィラデルフィアで甘味飲料に税金がかかるようになりました。いわゆるソーダ税です。

バークレイでは税金がかかるようになって3年で、甘味飲料の消費が45%減少しました(Am J Public Health 2019)。得られた税金は公衆衛生・教育プログラムなど、健康の公平性を保つのに使われています。

フィラデルフィアでは税金がかかるようになって1年で、甘味飲料の消費量が正味38%減少しました(JAMA 2019)。この税金収入は低所得家庭児の幼稚園・保育園無料化に使われます。

低所得者は学習の機会が少なく知識がないために、健康に悪い飲食物の消費が増えます。ソーダ税には、(1) 値段を上げて甘味飲料を買いにくくする、(2) 知識がないために悪い生活習慣になっている人に勉強の機会を与える、2つの効果があります。

フィラデルフィアのソーダ税は1オンス(30ml)あたり1.5セントです。実際のスーパー小売り価格をみますと、1オンス(30ml)あたり、2016年 5.43セント → 2017年 6.24セントでした。ソーダ税のかからないボルティモアでは同 5.33セント → 5.50セントでした。

ボルティモアではわずか3%の値上がりだったのですが、フィラデルフィアでは15%も小売り価格が値上がりしたのですね。


令和元年7月8日

超加工食品は全死亡、心血管系疾患を増やす

2つ目の論文は超加工食品は全死亡を増やすというものです(BMJ 2019)。SUN前向き研究の対象集団を使い、1999年から2014年にかけて行われました。舞台はスペインです。

参加者は19,899人(男性7,786人、女性12,113:20-91歳)です。食事は136項目のアンケートで調査しました。

観察期間中に335人が死亡しています(200,432人・観察年)。超加工食品の摂取割合を4分位に分け、最も多く取っている群は最も少ない群に比べて、全死亡のリスクが1.62(1.13-2.33)と増加しました。超加工食品の摂取が1人前増える毎に死亡リスクが18%増加します。

3つ目の論文は超加工食品は心血管系疾患を増やすというものです(BMJ 2019)。この研究はフランスで行われました。

参加人数は105,159人(18歳以上)、中央値で5.2年観察しています(NutriNet-Sante研究)。食事は3300以上の項目を含むデータベースで分類しました。

その結果ですが、超加工食品が食事に占める割合が10%増える毎の全心血管系疾患リスクは1.12と増加しました(冠動脈疾患では1.13、脳卒中は1.11)。飽和脂肪酸量、塩分、糖類、食物繊維、健康食パターンなどの各種項目で補正しても結果は同じでした。

1つ目の論文は「超加工食品は食べ過ぎてしまう」でした。今回の論文は「超加工食品は健康に悪い」です。超加工食品に含まれる添加物が悪いのか、食べやすくおいし過ぎるのが悪いのか分かりませんが、栄養の偏りではなさそうです。

健康のためには超加工食品を控えるのが良いでしょう。


令和元年6月28日

超加工食品は食べ過ぎてしまう

超加工食品の論文が3つ出ました。

超加工食品は一口で言うと、簡単においしく食べられるように加工された食品のことです。スーパーに並んでいる大量生産された加工食品はほとんどこれです。化学的処理・再形成が行われ、一般家庭では使用されない香料・甘味料・着色料・安定剤・防腐剤・乳化剤などが添加されています。大量生産された菓子パン、スナック菓子、菓子類、加工肉、インスタント食品、ソーダ類などがそうです。

最初の論文は「超加工食品は食べ過ぎてしまう」という論文です(Cell Metabolism 2019)。この研究では20人の参加者に必要2倍量の料理を提供し、参加者の自由判断で食べる量を調節してもらいました。

超加工食品あるいは非加工食品をそれぞれ14日ずつ食べてもらい、食品加工度により食べる量がどう影響されるかをみました。2つの食事群で、提供するカロリー、炭水化物、脂肪、塩分、食物繊維、大栄養素は同じです。

そうすると、超加工食品では非加工食品に比べて〜500kcal/日ほど食べる量が多くなり、増えたカロリー分だけ体重が増加しました。

超加工食品は食べやすく、おいしく感じるように加工されています。止められない、止まらない、というスナック菓子のコマーシャルがありましたが、超加工食品は食べ過ぎてしまうようです。

減量が望ましい人は超加工食品を避けるのが良いでしょう。


令和元年6月28日

糖尿病関連死亡リスク:日本はアジアの優等生

糖尿病になると、合併症を併発しやすいこともあって死亡リスクが高くなります。どのくらいリスクが高くなるのでしょうか。

アジアにおける糖尿病関連死亡の論文が発表されました(JAMA 2019)。この論文によりますと、糖尿病関連死亡リスクは国・地域により異なり、日本はリスクの低い国になっています。台湾や中国田舎での糖尿病関連死亡リスクは2.6倍以上、バングラディシュ、シンガポール、中国都会は2.2倍程度、日本、大韓民国、インドは2.0倍未満です。

糖尿病関連死亡リスクの低い国にインドが入っているのが意外です。他国に比べて観察期間が短いのに死亡者が多いので、もしかすると異なったものをみているかもしれません(糖尿病がない人の死亡率が高く、糖尿病の影響が相対的に小さくなった可能性があります)。

先ほどの論文では日本の研究は10編ほど分析されています。その中のJPHC研究(BMJ 2015)を紹介します。1990-2010年に集めたデータの分析です。参加人数は男性46,017人、女性53,567人(研究開始時の年齢40-69歳)、観察機関は平均17.8年で、男性8223人、女性4640人が亡くなられています。糖尿病関連死亡のリスクは男性で1.60、女性で1.98でした。また、糖尿病における冠動脈疾患の死亡リスクは男性で1.76、女性で2.49、癌死亡は男性で1.25、女性で1.04でした。

最近の米国の糖尿病関連死亡のリスクをみますと、日本より低くなっています(J Am Heart Assoc 2019)。2002-2014年のデータ集計で、対象は963,648人、平均観察期間は8年です。

米国の糖尿病関連死亡のリスクは1.18でした。これに心血管疾患のリスク因子(肥満指数、non-HDLコレステロール、収縮期血圧、喫煙、過去の心血管疾患)を補正すると1.16、さらに血糖コントロールで補正すると0.99でした。糖尿病における心血管系死亡リスクはそれぞれ1.29、1.18、1.03でした。HbA1c6-6.9%が最も死亡リスクが低くなっています。

以前にスウェーデンの成績を紹介しました。(1)HbA1c 7%以上、(2)血圧 140/80mmHg以上、(3)アルブミン尿(微量〜顕性蛋白尿)、(4)喫煙、(5)LDLコレステロール97mg/dl以上。この危険因子が5つとも無い場合、全死亡、急性心筋梗塞、脳卒中ともにリスクが一般集団と変わりませんでした。

日本はアジアの中でみると優等生ですが、もう少し頑張って死亡リスクを下げたいですね。


令和元年6月7日

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