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SGLT2阻害剤は骨折を引き起こさない

SGLT2阻害薬(スーグラ、カナグル、フォシーガ、ジャディアンスなど)は尿糖を増やして血糖を下げる薬です。

初めのころの治験で、SGLT2阻害剤は骨折を増やすかもしれないという成績がありました。しかしその後の治験で骨折リスクがはっきりせず、結論が持ち越しになっていました。

今回、SGLT2阻害剤が実際の臨床に使われて骨折リスクを認めなかったことが報告されましたので紹介します(JAMA Diabetes/Endocrinology 2021)。

2013年4月〜2017年12月に米国メディケア保険に加入していた66歳以上の人で、過去に骨折がなく、SGLT2阻害剤、DPP-4阻害剤、GLP1受容体作動薬(GLP1-RA)のいずれかを新たに開始した466,933人が対象です。

SGLT2阻害剤を開始した人が62,454人、うち45,889人に傾向スコアマッチングを行い、DPP-4阻害剤を開始した人、GLP1-RAを開始した人を1:1:1で選びました(平均年齢72歳、男性47%)。

骨盤骨折、股関節骨折、大腿骨、橈骨、尺骨の骨折を見ています。SGLT2阻害剤の骨折リスクは、DPP-4阻害剤と比較して0.90(0.73-1.11)、GLP1-RAと比較して1.00(0.80-1.25)で増えていませんでした。性別、フレイル度(脆弱の程度)、年齢、インスリン使用でカテゴリー別にみても結果は同じでした。

ほっとする成績ですね。


令和3年11月22日

果物が糖尿病発症を予防する

オーストラリアから、果物が糖尿病を予防するという論文が出ました(J Clin Endocrinol Metab 2021)。以前に「果物が糖尿病を予防する」論文を紹介していますが、同じ結論です。

今回の論文では、果物がどのように糖尿病を予防するかを調べるために、インスリン感受性(HOMA-S:インスリンの効きやすさ)とインスリン分泌活動(HOMA-β)を計算しました。HOMA-βはインスリン分泌能とみられることが多いのですが、論文ではインスリン分泌活動としています。

対象は7,625人(ADOLS:45%が男性、平均54歳)、平均12年追跡しています。追跡開始時に「果物摂取」アンケートを聞き取っています。

果物を多く摂る人では、インスリン感受性(HOMA-S)が増加し、インスリン分泌活動(HOMA-β)が減少していました。空腹時血糖、食後血糖には影響がありませんでした。

糖尿病発症についてです。果物摂取量で4群に分けています。最も食べていない第1群(平均62g摂取)と比べて、中等度に果物を摂取している第3群(平均230g摂取)では、5年経過で糖尿病の発症が36%少なくなっていました。果物ジュースには糖尿病予防効果はありませんでした。

12年経過では、糖尿病予防効果ははっきりしませんでした。食事調査は追跡開始時の1回だけであり、影響がなくなっていても当然かもしれません。

まとめますと、果物を摂るとインスリンが効きやすくなり、インスリン分泌の負担が減ります。その結果として糖尿病の発症が予防されるようです。


令和3年10月21日

若い頃のコレステロール (続)

若い時のコレステロールが動脈硬化に大きく関連するという研究は昨年も発表されています(J Am Coll Cardil 2020)。

4,958人(18-30歳)を1985-1986年に登録し、16年追跡した研究(CARDIA)です。

275人が心血管疾患を発症しています。LDLc暴露面積(LDLcx年)のハザードリスクは1.053(100mg/dlx年ごと)、LDLc勾配とは0.797(mg/dl/年ごと)でした。LDLc暴露量が平均より多く、年齢とともにLDLcが下がっている人が最も多く心血管疾患を発症していました。

若い時のLDLcの方が影響が強く、動脈硬化を予防するには若い時期からLDLcをコントロールする必要がありそうです。

日本人で考えてみますと、「今の高齢者」が若い頃は、コレステロール値が低めでした。「今の若い人」は同年齢の米国人よりコレステロール値が高くなっています。若い人の食育は大切に思います。

動脈硬化疾患はこれからどんどん増えていくかもしれません。


令和3年10月11日

若い頃のコレステロール

LDLコレステロール(LDLc)が高くなると、動脈硬化が促進します。中年以降になってLDLc値を気にされる方が多くなりますが、実は若い頃のLDLcも大切です。

米国4つのコホートを合わせて解析した論文が発表されましたので紹介します(JAMA Cardiol 2021)。

対象は18,288人、平均56.4歳(56.4%が女性)、平均追跡期間16年です。18-60歳の間に2年以上の間隔で少なくとも2回LDLcを測定し、40-60歳で1回以上のLDLcを測定した人たちです。

心血管疾患が1165例、脳梗塞が599例、心不全が1145例、起こっています。最も近い採血でのLDLcで補正した場合のハザードリスクを計算しますと、最も高値群と低値群の比較で、

累積暴露LDLcで1.57(P=0.01)、時間荷重平均LDLcで1.69(p<0.001)でした。LDLc勾配とは無関係でした。心不全や脳梗塞とは関連が認められませんでした。この成績は若い時のLDLcコントロールが将来の心血管疾患予防に大切なことを示しています。

高コレステロール血症の治療では10年間の虚血性心疾患リスク(吹田スコア)をみることが多いのですが、もっと長い時間の影響を考えるのが良いかもしれません。


令和3年10月11日