食事回数は3回/日が良い
食事回数や食事時間の間隔についての論文(Acad Nutr Diet 2022)が出ましたので紹介します。
この論文では、米国全国健康・栄養調査(1999-2014)の成績を分析しています。データが揃っている40歳以上の24,011人を対象に、食事回数と全死亡・心血管死の関連をみました。食事調査は2回行っていますが、最初に行ったデータを使いました。
185,398人・年の観察期間中に4,175人が死亡、うち878人が心血管死でした。1日3食の人は男性で59%、女性で63%でした。朝食抜き、昼食抜き、夕食抜きの人は男性でそれぞれ19、22、8%、女性で19、21、7%でした。
1日3回食事をしている人に比べて、1回食の人は、全死亡で1.30(1.03-1.64)、心血管死で1.83(1.26-2.65)と死亡リスクが増加していました。
朝食抜きの人は心血管死リスクが1.40(1.09-1.78)、昼食抜きの人は全死亡リスクが1.12(1.02-1.24)、夕食抜きの人は全死亡リスクが1.16(1.02-1.32)でした。
3回食事をしている人の分析です。食事間隔が4.5時間未満の人は4.6-5.5時間の人に比べて、全死亡リスクが1.17(1.04-1.32)と増加していました。
米国の成績ですが、食事は1日3回、食事時間の間隔をあけるのが良いようです。
令和5年1月30日
糖尿病の猫にもSGLT2阻害薬
これまで糖尿病猫には糖尿病の飲み薬がなく、食事療法とインスリン注射で治療されていました。食事療法はともかく、インスリン注射は飼い主にとってわずらわしい負担でした。
米国の話ですが、2022年12月に猫用のSGLT2阻害薬(尿糖を増やして血糖を下げる薬)が認可されました。私も知らなかったのですが、猫に限らず、動物用の糖尿病飲み薬の認可は初めてのようです。
認可されたのは、ベクサキャット(ベクサフロジン)です。ベクサキャットの有効率は高く、80%以上の糖尿病猫で血糖改善効果が認められました。
ベクサキャットを適切に使うためには、飼い主による観察(ケトアシドーシスなどの副作用チェック:食欲低下、活動性低下、嘔吐・下痢、歩けない座れない)も必要です。
ベクサキャットはフレーバーを付けた錠剤で提供されます。残念ながらインスリンを必要とする猫には使えません。日本でも使えるようになると良いですね。
令和5年1月27日
フィブラート系薬剤は心血管イベントを減らさない !?
中性脂肪が高くなると心血管イベント(心筋梗塞など)が増えます。しかし中性脂肪を下げる薬が心血管イベントを減らすかどうかはよく分かっていません。
これまでナイアシン製剤、フェノフィブラートが中性脂肪を減らしながらも、心血管イベントを減らさなかったことが報告されています。ただ、サブ解析から糖尿病をもつ人では何がしかの効果があるのではないか、と推定されていました。
今回、糖尿病の人を対象にペマフィブラート(パルモディア)が心血管イベントを減らすかどうかを検討した成績が報告されましたので、紹介します(NEJM 2022)。
ペマフィブラートは日本で開発された薬です。フィブラート系薬剤はPPARαに作用しますが、ペマフィブラートはPPARαに対する選択性が高く、注目された薬です。
今回の研究の対象は、2型糖尿病があり、中性脂肪200-499mg/dl、HDLコレステロール40mg/dl以下の方です。ペマフィブラート投与前の空腹時中性脂肪は平均271mg/dl、HDLコレステロールは平均33mg/dlでした。66.9%に心血管疾患があります。全員で10,497人、観察期間は〜3.4年でした。
プラセーボ(偽薬)と比較して、ペマフィブラート投与群では投与開始して4ヶ月で中性脂肪が26.2%減少、VLDLコレステロールが25.8%減少、レムナントコレステロールが25.6%減少。アポリポ蛋白C-IIIが27.6%減少しました。動脈硬化に関与するアポリポ蛋白Bは+4.8%と減少を認めませんでした。
主要評価項目は非致死性の「心筋梗塞+脳梗塞+冠動脈治療」、心血管死です。主要評価項目はペマフィブラート群で572人、偽薬群で560人起こり、ハザード比は1.03(0.91-1.15)、両群間で差を認めませんでした。
今回の対象集団では、コレステロールを下げるスタチンが95%の人に処方されています(強力スタチンは69%の人に処方)。スタチンが処方され、強力な脂質低下療法を受けている人では、ペマフィブラートで中性脂肪が下がっても、心血管イベントを抑える効果はないようです。
令和4年11月22日
大腿筋内脂肪と心不全
本来脂肪が溜まる場所でないところに溜まる脂肪を異所性脂肪と呼びます。筋肉にも脂肪が溜まります。最近、大腿筋肉内の脂肪が心不全リスクと関連していることが報告されましたので紹介します(J Am Coll Cardiol HF 2022)。
今回の研究の新しいところは、脂肪の沈着部位を大腿筋肉内と大腿筋周膜に分けて分析したことです。
対象集団は、2,399人の米国人で、年齢は70-79才、男性が48%、黒人が40.2%(残りは白人)です。研究開始時には心不全がありません。12.2年(中央値)経過観察している間に、心不全が485例発症しました。
年齢、性別、人種別、教育別、血圧値、空腹時血糖、喫煙、冠動脈疾患、クレアチニン(腎機能の指標)で補正後の成績です。
筋肉内脂肪は心不全の発症と関連していました:第3分位のハザード比は第1分位に比較して、1.34(1.06-1.69)でした。この関連は、さらにBMI(体格指数)、体脂肪率、内臓脂肪、大腿筋力で補正しても認められました。いっぽうで、筋周膜脂肪は心不全に関連していませんでした。
まとめますと、筋肉内の脂肪が心不全に関連し、筋肉周囲の脂肪は心不全に関連していませんでした。
筋肉は運動臓器ですが、内分泌臓器とも考えられます。筋肉内で起こる変化は炎症、酸化ストレス、神経ホルモン様作用を通じて遠く離れた心臓の働きに影響を与えます。
筋肉内の脂肪ですが、インスリン抵抗性(メタボリックシンドロームが代表)、炎症、筋萎縮などで、溜まりやすくなります。食事では、とくに飽和脂肪酸が多くなると溜まりやすくなります。
研究はまだ糸口の段階ですが、心不全予防の新しい道筋が示されるかもしれません。
令和4年9月30日