DPP-4阻害剤は心血管系イベントを増やさない、減らさない
ジャヌビア、グラクティブ(シタグリプチン)が心血管系イベントを減少させないことを紹介しました(H25/6/19)が、ネシーナ(アログリプチン)、オングリザ(サキサグリプチン)も同様に心血管系イベントを改善しないことが明らかになりました(NEJM 2013)。
DPP-4阻害剤に大血管合併症の減少を期待していた人には残念ですが、心血管系イベントを増やさないことが確認され、安心して使えることがわかりました。ただオングリザで心不全による入院が増えていました。これについては、本当に意味のある増加かどうか、次の確認研究が必要です。
両研究とも実薬群の方がHbA1cが改善しています。HbA1cの差が0.3%と小さく、短期間の研究ということもありますが、HbA1cが下がっても心血管イベントは変わらないようです。心血管イベントを減らすには、血圧や脂質異常のコントロールが大切です。
なお両研究ともDPP-4阻害剤で懸念される膵炎、膵癌は増えていませんでした。
平成25年10月23日
オングリザの研究は、16,492人の糖尿病患者を平均2.1年観察しています。主要エンドポイントは心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳梗塞です。ネシーナの研究は、5,380人の心筋梗塞直後の糖尿病患者を平均18ヶ月観察しています。主要エンドポイントは心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳梗塞です。両研究とも実薬群とプラセーボ(偽薬)群を比較し、両群間で心血管系イベントに差がありませんでした。
DPP-4阻害剤に大血管合併症の減少を期待していた人には残念ですが、心血管系イベントを増やさないことが確認され、安心して使えることがわかりました。ただオングリザで心不全による入院が増えていました。これについては、本当に意味のある増加かどうか、次の確認研究が必要です。
両研究とも実薬群の方がHbA1cが改善しています。HbA1cの差が0.3%と小さく、短期間の研究ということもありますが、HbA1cが下がっても心血管イベントは変わらないようです。心血管イベントを減らすには、血圧や脂質異常のコントロールが大切です。
なお両研究ともDPP-4阻害剤で懸念される膵炎、膵癌は増えていませんでした。
平成25年10月23日
糖尿病では脳血管障害と心血管障害、どちらが多い?
我が国では、脳血管障害が心血管障害より多いと言われてきました。血圧の目標基準を決める際にも、日本人の特性としてこのことを考えるよう、提案されています。でも最近のデータを眺めるとこの傾向が変わってきているようです。
一昨年の日本動脈硬化学会のシンポジウムで、糖尿病患者の脳心血管系疾患発症率が報告されました(札幌医大 斎藤Drが発表)。
驚くことは、「糖尿病患者では特に冠動脈疾患が増える」ことです。その結果、心血管障害が脳血管障害より多くなっています。今年(H25)の日本糖尿病学会で、JDCSの新しいデータが追加発表されました。それによると、「心血管障害:脳血管障害:下肢血管障害が6:3:1」とさらに冠動脈疾患の比率が増えています(東京慈恵会医大 西村Drが発表)。動脈硬化性疾患の構造が欧米に似てきているようです。
平成25年10月9日
一昨年の日本動脈硬化学会のシンポジウムで、糖尿病患者の脳心血管系疾患発症率が報告されました(札幌医大 斎藤Drが発表)。
その発表では、(1) Japan Diabetes Complications Study(JDCS)における日本人糖尿病患者、(2) 久山町研究における日本人一般住民、(3) 英国の糖尿病患者(UKPDS研究) の3集団における脳心血管系疾患発症率を調べています。
冠動脈疾患発症率(1000人・年あたり)は、「日本人糖尿病患者では 9.6 (男性11.2,女性7.9)。日本人一般住民では男性3.5,女性1.8。英国糖尿病患者では17.4」でした。脳卒中発症率(1000人・年あたり)は、「日本人糖尿病患者では 7.6 (男性8.5,女性6.6)。日本人一般住民では、男性5.3,女性3.9。英国人糖尿病患者では5.0」でした。
驚くことは、「糖尿病患者では特に冠動脈疾患が増える」ことです。その結果、心血管障害が脳血管障害より多くなっています。今年(H25)の日本糖尿病学会で、JDCSの新しいデータが追加発表されました。それによると、「心血管障害:脳血管障害:下肢血管障害が6:3:1」とさらに冠動脈疾患の比率が増えています(東京慈恵会医大 西村Drが発表)。動脈硬化性疾患の構造が欧米に似てきているようです。
平成25年10月9日
果物の種類について
実は果物が糖尿病を悪くするか、はっきりしていません。最近、果物の種類によって糖尿病発症のリスクが異なることが発表されました(BMJ 2013)ので、紹介します。
対象と観察年は、(1) 看護婦さんの集団(1984-2008年)66,105人 (2) 看護婦さんの集団(1991-2009年) 85,104人 (3) 男性医療従事者の集団(1986-2008年)36,173人です。観察開始時に主要な慢性疾患がない人たちで、2型糖尿病の発症を観察しています。
10種類の果物の摂り方を調べています。糖尿病リスクは、1週間で3皿(〜450g)摂取する毎に、ブルーベリー 0.74(0.66-0.83)、ブドウ/干しブドウ 0.88(0.83-0.93)、プルーン 0.89(0.79-1.01)、リンゴ/西洋ナシ 0.93(0.90-0.96)、バナナ 0.95(0.91-0.98)、グレープフルーツ 0.95(0.91-0.99)、モモ/プラム/アプリコット 0.97(0.92-1.02)、オレンジ 0.99(0.95-1.03)、イチゴ 1.03(0.96-1.10)、カンタロープメロン 1.10(1.02-1.18)でした。
何によって果物の差が出たかはわかっていません。アントシアニンという色素が糖尿病リスクを下げると言われたこともありますが、今回の研究でははっきりしませんでした。グリセミックインデックス、グリセミック負荷(グリセミックロード)も糖尿病リスクと関連がありませんでした。グリセミックインデックスは炭水化物による血糖の上がりやすさの指標で、グリセミック負荷はその指標に摂取量を掛けたものです(果物によるグリセミック負荷は全体の負荷量からみると10%くらいで大きくありません)。
一方で、果物ジュース(リンゴジュース、オレンジジュース、グレープフルーツジュース他)の糖尿病リスクは1.08(1.05-1.11)でした。
結論は特定の果物摂取が糖尿病リスク低下と関連していて(とくにブルーベリー、ブドウ、リンゴがよろしい)、果物ジュースは糖尿病リスク上昇と関連 していました。
平成25年9月27日
対象と観察年は、(1) 看護婦さんの集団(1984-2008年)66,105人 (2) 看護婦さんの集団(1991-2009年) 85,104人 (3) 男性医療従事者の集団(1986-2008年)36,173人です。観察開始時に主要な慢性疾患がない人たちで、2型糖尿病の発症を観察しています。
10種類の果物の摂り方を調べています。糖尿病リスクは、1週間で3皿(〜450g)摂取する毎に、ブルーベリー 0.74(0.66-0.83)、ブドウ/干しブドウ 0.88(0.83-0.93)、プルーン 0.89(0.79-1.01)、リンゴ/西洋ナシ 0.93(0.90-0.96)、バナナ 0.95(0.91-0.98)、グレープフルーツ 0.95(0.91-0.99)、モモ/プラム/アプリコット 0.97(0.92-1.02)、オレンジ 0.99(0.95-1.03)、イチゴ 1.03(0.96-1.10)、カンタロープメロン 1.10(1.02-1.18)でした。
何によって果物の差が出たかはわかっていません。アントシアニンという色素が糖尿病リスクを下げると言われたこともありますが、今回の研究でははっきりしませんでした。グリセミックインデックス、グリセミック負荷(グリセミックロード)も糖尿病リスクと関連がありませんでした。グリセミックインデックスは炭水化物による血糖の上がりやすさの指標で、グリセミック負荷はその指標に摂取量を掛けたものです(果物によるグリセミック負荷は全体の負荷量からみると10%くらいで大きくありません)。
一方で、果物ジュース(リンゴジュース、オレンジジュース、グレープフルーツジュース他)の糖尿病リスクは1.08(1.05-1.11)でした。
結論は特定の果物摂取が糖尿病リスク低下と関連していて(とくにブルーベリー、ブドウ、リンゴがよろしい)、果物ジュースは糖尿病リスク上昇と関連 していました。
平成25年9月27日
果物と糖尿病
日本人が食べている果物の量は、(1) 所帯所得200万円未満: 男性73.9g、女性110.6g (2) 所帯所得200万円〜600万円未満: 男性94.8g、女性124.8g (3) 所帯所得600万円以上: 男性93.9g、女性135.6g となっています(平成23年度国民健康・栄養調査報告)。所得の高い人の方が、果物をよく食べていますが、これは果物が高いからでしょう。
では、果物は糖尿病にとってどうなのでしょうか。我が国の食品交換表では果物は表2に分類され、果物はビタミンの補給に大切なので1日に1単位(80kcal)程度食べることを勧めています。しかし、糖度が高く血糖の上昇や中性脂肪の増加をまねく場合があるので食べ過ぎないようにしましょう、とも書かれています。食べる必要がありますが、あまり積極的に摂らないように、という指導です。
米国ではどうでしょうか。
米国糖尿病学会(ADA2013)では、果物と野菜を8-10皿摂るように勧めています。1皿は果物150g、野菜では1カップ(〜240ml)です。ジョスリンクリニックの食事療法(2011)では、果物はグリセミックインデックスが低く食物線維が豊富なので、勧めるべき食品に分類しています(グリセミックインデックス:基準量の炭水化物による血糖の上がりやすさの指標)。
なお、糖尿病に対してではありませんが、米国立保健研究所は、高血圧予防食としてDASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension:高血圧予防食) を勧めています。DASH食は、(1) 野菜・果物・低脂肪の乳製品を十分摂る (2) 肉類および砂糖を減らす、ことを基本にしています。具体的には、2000kcalの食事で果物4-5皿摂るよう勧めています。
平成25年9月27日
では、果物は糖尿病にとってどうなのでしょうか。我が国の食品交換表では果物は表2に分類され、果物はビタミンの補給に大切なので1日に1単位(80kcal)程度食べることを勧めています。しかし、糖度が高く血糖の上昇や中性脂肪の増加をまねく場合があるので食べ過ぎないようにしましょう、とも書かれています。食べる必要がありますが、あまり積極的に摂らないように、という指導です。
米国ではどうでしょうか。
米国糖尿病学会(ADA2013)では、果物と野菜を8-10皿摂るように勧めています。1皿は果物150g、野菜では1カップ(〜240ml)です。ジョスリンクリニックの食事療法(2011)では、果物はグリセミックインデックスが低く食物線維が豊富なので、勧めるべき食品に分類しています(グリセミックインデックス:基準量の炭水化物による血糖の上がりやすさの指標)。
なお、糖尿病に対してではありませんが、米国立保健研究所は、高血圧予防食としてDASH食(Dietary Approaches to Stop Hypertension:高血圧予防食) を勧めています。DASH食は、(1) 野菜・果物・低脂肪の乳製品を十分摂る (2) 肉類および砂糖を減らす、ことを基本にしています。具体的には、2000kcalの食事で果物4-5皿摂るよう勧めています。
平成25年9月27日