院長ブログ一覧

GLP-1製剤の飲み薬が開発中です

糖尿病薬の一つにGLP-1製剤があります。バイエッタ、リキスミア 、ビクトーザ、ビデュリオン、トルリシティが代表的な薬です。インクレチン作用を高めるという点でDPP-4阻害薬と共通しますが、DPP-4阻害薬より効果が強いお薬です。残念なことにDPP-4阻害薬と違って注射薬しかありません。

現在、GLP-1製剤の飲み薬の開発が進められています。以前にセマグルチド注射薬(ノボ社:日本未発売)を紹介しましたが、この薬を飲み薬にした治験が第3相まで進行しています。今年に発表が予定されていて、うまく進めば2020年に発売予定です。

服用してから30分は食事が摂れないこと、吐き気をおこす可能性なども言われていますが、DPP-4阻害薬を上回る効果が期待されています。


注)DPP-4阻害薬はジャヌビア、グラクティブ、エクア、ネシーナ、トラゼンタ、テネリア、スイニー、オングリザ、それにザファテック、マリゼブなどです。

注)第3相治験は、その薬を使うであろう患者を対象に、有効性、安全性の検討を主な目的にして、それまでの治験より大きな規模で行われます。第3相治験が無事通過できれば、承認に向けた手続きが行われます。


平成30年2月23日

インフルエンザは心筋梗塞の引き金になる

呼吸器系の病気が急性心筋梗塞の引き金になることがあります。インフルエンザにかかった時の心筋梗塞リスクについて論文が出ましたので紹介します(NEJM 2018)。

こういった研究ではインフルエンザ感染が正確に診断されているかが問題になりますが、今回の研究ではオンタリオ公衆衛生検査室、大学病院検査室でインフルエンザ感染を確認していて、精度の高い診断です。

上記検査室に呼吸器系ウィルス検査が提出された277,982検体のうち、148,307検体にインフルエンザ検査が行われ、19,729検体がインフルエンザ陽性でした。2W内にも検査が提出されてインフルエンザ陽性だった684検体を除き、また提出の前後各1年(2年間:下記のリスク期間とコントロール期間)に心筋梗塞を起こさなかった18,546検体を除いた499検体提出者で分析が行われました。

インフルエンザが検出された日を起点として、7日間をリスク期間とし、その7日間を除く前後各1年(2年間)をコントロール期間としました。

インフルエンザにかかって7日以内の心筋梗塞リスクは、6.05(3.86-9.50)と大きく増えていました。ウィルス別に細かくみると、インフルエンザBで10.11(4.37-23.38)、インフルエンザAで5.17(3.02-8.84)、RSウィルスで3.51(1.11-11.12)、その他のウィルスで2.77(1.23-6.24)でした。なお年齢別にみると、65歳以上で心筋梗塞が増えていました(若い成人では増えませんでした)。インフルエンザBのほうがインフルエンザAより悪い成績に見えますが、検出力の問題があってそうとは言えないそうです。


平成30年2月15日

減量した脂肪はどこへ行く?

Q:減量した脂肪はどこへ行くでしょう?

あまり考えたことのない質問ですね。
一番多い回答は「エネルギーとして使ってしまう」かもしれません。しかし質量がエネルギーに転換される(E=mc2)と莫大なエネルギーが産生されます(原子爆弾など)。もちろんそんなことはありません。

ヒト脂肪組織の中性脂肪の平均的な組成はC55H104O6です。
C55H104O6が代謝されますと、
  C55H104O6 + 78O2 → 55CO2 + 52H2O

従って10kgの中性脂肪は代謝されると、29kgの酸素と結びついて 19.6kgの二酸化炭素と9.4kgの水になります(BMJ 2014)。

肺から取り込んだ酸素を除いて計算しますと、10kgの中性脂肪は8.4kgが二酸化炭素(肺から出ていく:84%)、1.6kgが水(主に尿に出ていく:16%)に変わります。正解は「主に肺から出ていく」です。

A: 主に肺から出ていく


平成30年1月17日

肥満パラドックスは存在しない:太っているのはやはり良くない

「太ると生活習慣病が多くなる」ことは良く知られています。しかし一方で、「太っているほうが死亡リスクが小さい」という疫学調査もあります。この2つの話は相容れないもので、肥満パラドックスと呼ばれています。

考えてみますと、体重は健康を害しても減少します。こういう人たちが多く紛れ込むと「痩せている人の死亡リスクが高く評価」され、「太っている人の方が死亡リスクが少ない」と誤ってしまいます。

このようなバイアス*を避けるために「過去の最大BMI」と死亡リスクの関連を検討した成績が発表されました(Ann Intern Med 2017)。大半の研究は「調査開始時のBMI*」を計算に用いています。「過去16年の最大BMIを用いた」ことがこの研究のポイントです。

バイアス:本来あるべき理由ではなく、別の何らかの理由で統計が影響を受けること。バイアスがあると誤った解釈がなされます
BMI(体格指数、肥満指数):体重(kg) /(身長(m)の2乗)


対象は看護師研究および男性医療従事者研究の合計225,072人です。2年毎に体重、生活習慣(食事、運動、喫煙など)、医学的問題点、服用薬を聞き取っています。身長は調査開始年だけ測定しています。

12年の経過観察中に32,571人が亡くなられました。「過去最大BMI」が25未満の人を基準に検討しますと、

全死亡リスクは「過去最大BMI」が
  • 25未満の人で1.0(基準)
  • 25〜29.9の人で 1.06(1.03〜1.08)、
  • 30.0〜34.9の人で 1.24(1.20〜1.29)、
  • 35.0以上の人で 1.73(1.66 〜1.80)でした。

これは男性でも女性でも同様のパターンでした。
また「調査年のBMI」を計算に用いますと、太っている人の方が死亡リスクが0.96と低く、肥満パラドックスが認められました。

計算に用いるBMIを適切に設定すると肥満パラドックスは認めなくなります。太っているのはやはり良くないようです。


平成29年12月15日