糖尿病の歴史3 (古代インド)
今回は古代インドにおける糖尿病のお話です。
お釈迦さまと同じ頃(紀元前600年頃) に、スシュルタという医師がいました。彼はスシュルタ本集(インドの古典医学書)を残しました。この医学書は8世紀にアラビア語に翻訳され、世界的にもよく読まれたようです。この中に糖尿病に関する記載があります
スシュルタ本集には、「過食、運動不足で肥満を来し、糖尿病(今の2型糖尿病)が起こる」と書いてあります。これだけでも立派な観察ですが、「1型と考えられる糖尿病 」も記載していて驚きます。「先天性で親の種に欠陥があるために起こり、、、痩せている」と書かれています。
当時の食事はどういうものだったでしょう。インドの神々の食事には「あぶり肉」がよく出てきます。「土地のエキスは草食動物が取込み、さらに肉食動物が取り込む。その過程でエキスが濃縮される」と考えられていて、かなり肉食はあったと思われます。菜食主義を進めた仏教、ジャイナ教の力はまだ弱く、 カーストによる食事戒律も弱かったでしょう。今のインド食とはずいぶん異なっていたと思います。なおインドカレーは、中央アジアの文化とインド文化が融合し、そこにアラブ文化が、さらに新大陸の香辛料+ヨーロッパの文化が融合してできたものです(16世紀以降の発展)。
平成27年1月7日
お釈迦さまと同じ頃(紀元前600年頃) に、スシュルタという医師がいました。彼はスシュルタ本集(インドの古典医学書)を残しました。この医学書は8世紀にアラビア語に翻訳され、世界的にもよく読まれたようです。この中に糖尿病に関する記載があります
スシュルタ本集には、「過食、運動不足で肥満を来し、糖尿病(今の2型糖尿病)が起こる」と書いてあります。これだけでも立派な観察ですが、「1型と考えられる糖尿病 」も記載していて驚きます。「先天性で親の種に欠陥があるために起こり、、、痩せている」と書かれています。
当時の食事はどういうものだったでしょう。インドの神々の食事には「あぶり肉」がよく出てきます。「土地のエキスは草食動物が取込み、さらに肉食動物が取り込む。その過程でエキスが濃縮される」と考えられていて、かなり肉食はあったと思われます。菜食主義を進めた仏教、ジャイナ教の力はまだ弱く、 カーストによる食事戒律も弱かったでしょう。今のインド食とはずいぶん異なっていたと思います。なおインドカレーは、中央アジアの文化とインド文化が融合し、そこにアラブ文化が、さらに新大陸の香辛料+ヨーロッパの文化が融合してできたものです(16世紀以降の発展)。
平成27年1月7日
糖尿病の歴史2 (古代エジプト)
エベルスパピルスに載っている糖尿病の薬は何でしょう、興味がありませんか?
最初の処方を見ると「血玉髄」「赤い穀類」「キャロブ」と書かれてます。血玉髄はずっと南のエレファンチンでとれる碧玉の一種で、細かい石英結晶の集まりです。酸化鉄による赤色斑点があり、血液にたとえられます。赤い穀類はおそらく小麦でしょう。インターネットで調べると「ピラミッドで見つかるのと同じ」と宣伝している赤味を帯びた小麦粉があります。残念ながら、この2つは糖尿病に効きそうな感じがしません。
気になるのはキャロブです。キャロブ(和名:イナゴマメ)に含まれるピニトールは、ブドウ糖輸送担体の亢進作用があると報告されています。ブドウ糖の輸送が良くなると、血糖が下がります。またキャロブの胚乳から得られる高分子多糖類(キャロブガム:水様性食物繊維)は食後血糖の低下に良い影響があります。このキャロブガムは、ミルクをよく吐く乳児用のミルク(森永ARミルク)にも配合されています。
次の処方は、「サイプレス」、「草の種」、「bhh灌木の根っこ」が書いてあります。あとの2つはよくわかりません。最初のサイプレスはカヤツリグサの仲間で、抜いても抜いても生えてくる雑草です。サイプレスには抗糖尿病作用が報告されている品種があります(Cyperus rotundus, Cyperus tegetum rox b)。もしかすると、糖尿病にわずかは役立ったのかもしれません。
平成26年12月27日
最初の処方を見ると「血玉髄」「赤い穀類」「キャロブ」と書かれてます。血玉髄はずっと南のエレファンチンでとれる碧玉の一種で、細かい石英結晶の集まりです。酸化鉄による赤色斑点があり、血液にたとえられます。赤い穀類はおそらく小麦でしょう。インターネットで調べると「ピラミッドで見つかるのと同じ」と宣伝している赤味を帯びた小麦粉があります。残念ながら、この2つは糖尿病に効きそうな感じがしません。
気になるのはキャロブです。キャロブ(和名:イナゴマメ)に含まれるピニトールは、ブドウ糖輸送担体の亢進作用があると報告されています。ブドウ糖の輸送が良くなると、血糖が下がります。またキャロブの胚乳から得られる高分子多糖類(キャロブガム:水様性食物繊維)は食後血糖の低下に良い影響があります。このキャロブガムは、ミルクをよく吐く乳児用のミルク(森永ARミルク)にも配合されています。
次の処方は、「サイプレス」、「草の種」、「bhh灌木の根っこ」が書いてあります。あとの2つはよくわかりません。最初のサイプレスはカヤツリグサの仲間で、抜いても抜いても生えてくる雑草です。サイプレスには抗糖尿病作用が報告されている品種があります(Cyperus rotundus, Cyperus tegetum rox b)。もしかすると、糖尿病にわずかは役立ったのかもしれません。
平成26年12月27日
糖尿病の歴史1 (古代エジプト)
最も古い糖尿病の記載は紀元前1550年頃のエベルスパピルスに見られます。エベルスパピルスはエジプトのルクソール、古代都市のテーベで1872年に発見されました。
その記載をみると、多尿をきたす疾患で、「最もひどいときは、身体がやせ衰える病気がある。その患者を診察しても、肋骨が浮き出る以外に何の所見もない」とあります。当時、多尿(尿量が多い)は頻尿(回数が多い)と区別されていません。溢尿性疾患(尿を出し切ることができず、ちょびちょび尿が出る)の記載もあり、尿が多いだけで糖尿病と診断できません。
「何の所見もない」は、外傷や明らかな病的臓器がないという意味でしょう。 「体重減少をきたす原因不明の多尿疾患」と記述されてようやく糖尿病と結びつきます。強いインスリン欠乏状態にあると思われます。
原文(カーペンター) ではこの後に呪文を唱え、薬の調合が続きます。
平成26年12月26日
その記載をみると、多尿をきたす疾患で、「最もひどいときは、身体がやせ衰える病気がある。その患者を診察しても、肋骨が浮き出る以外に何の所見もない」とあります。当時、多尿(尿量が多い)は頻尿(回数が多い)と区別されていません。溢尿性疾患(尿を出し切ることができず、ちょびちょび尿が出る)の記載もあり、尿が多いだけで糖尿病と診断できません。
「何の所見もない」は、外傷や明らかな病的臓器がないという意味でしょう。 「体重減少をきたす原因不明の多尿疾患」と記述されてようやく糖尿病と結びつきます。強いインスリン欠乏状態にあると思われます。
原文(カーペンター) ではこの後に呪文を唱え、薬の調合が続きます。
平成26年12月26日
ランタスのバイオ後続品
欧州医薬品庁のヒト用医薬品委員会はEli Lilly/Boehringer Ingelheim社から申請されていたランタスのバイオ後続品(Abasria)を認可するようEUに推薦しました(平成26年6月27日)。Abasriaは、初めてのバイオ後続品インスリンです。
ランタスは持効型のインスリン製剤(グラルギンインスリン)で、基礎インスリン分泌を補充するのに使われます。Eli Lilly(イーライリリー)社は1923年からインスリンを作っていて、インスリンに関するトップ企業です。
「バイオ後続品(biosimilar)」という言葉はなじみが少ないかもしれません。「ジェネリック医薬品(後発品、後続品)」と似ていますが、まったく同じでないので簡単に説明します。
インスリンは結構高価ですので、信頼できる企業がバイオ後続品を出すことは歓迎です。日本ではいつになるでしょうか?
平成26年7月4日
ランタスは持効型のインスリン製剤(グラルギンインスリン)で、基礎インスリン分泌を補充するのに使われます。Eli Lilly(イーライリリー)社は1923年からインスリンを作っていて、インスリンに関するトップ企業です。
「バイオ後続品(biosimilar)」という言葉はなじみが少ないかもしれません。「ジェネリック医薬品(後発品、後続品)」と似ていますが、まったく同じでないので簡単に説明します。
ジェネリック医薬品は小分子の化合物で、構造的にまったく同一の分子を含 みます。これに対してバイオ後続品は蛋白質などのように大きな分子で複雑です。生きた細胞に医薬品の構造遺伝子を組み込んで作りますが、同じ遺伝子情報を 導入しても作られてくるものが微妙に異なります。そのためジェネリック品と異なる取り扱いをします。料理にたとえると、同じレシピーで作っても、環境に よって味が違うようなものです。
インスリンは結構高価ですので、信頼できる企業がバイオ後続品を出すことは歓迎です。日本ではいつになるでしょうか?
平成26年7月4日