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糖尿病の歴史12 (病名に甘さが加わる)

糖尿病は、英語で "diabetes mellitus" といいます。初めの単語 "diabetes" は、カッパドキアのアレタイオスが説明したようにギリシア語に由来します。「dia は〜を通して」、「betes は行く」、であり、”diabetes” は「留まらずに通り抜ける」という意味です。つまり、「液体が身体の中に留まることがなく、身体を梯子のように使う」です。では次の単語 "mellitus(蜂蜜のように甘い)"という言葉はいつ、どのようにつけられたのでしょうか。

おしっこがたくさん出る病気はいくつかあります。糖尿病はその代表ですが、ほかに尿崩症という病気があります。尿崩症は頭の中(下垂体後葉)で作られる抗利尿ホルモンが不足して起こる病気です。おしっこを濃くすることが出来なくなり、尿量が増えます。尿糖は出ませんので、おしっこを舐めても甘くありません。「おしっこの味がちがうぞ」ということで、2つの病気が区別されるようになり、病名も2つに分けられました。diabetes insipidus (尿崩症)とdiabtes mellitus(糖尿病)です。insipidusは「味気ない、無味」という意味です。

誰が最初に "mellitus" をくっつけたのかはよくわかりません。いろいろな説があり、その一人がウィリアム カレンです。カレンはスコットランドの医師・化学者・農業者です。エーテル気化による温度低下を利用して少量の氷を作り(1755年)、冷凍技術の父と呼ばれる人です。

少し脱線しますが、アルコールは抗利尿ホルモンの出方を抑えます。ビールのような水分の多いアルコール飲料であっても、飲んだ量を超えるおしっこが出て、脱水になります。アルコールを摂ったときは努めて水分を補給するようにしましょう。


平成27年5月9日
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