主な生活習慣病(検診)

健診(検診)検査の読み方

健診で行われる検査の読み方
ここでは、各検査の考え方を説明します。 検査値を判断するときの基準値ですが、検査を
受けられた施設で基準値が少し異なることがあります。その場合は、そちらの基準値を
参考にして下さい。

(1) 身体計測:身長、体重、BMI、腹囲
太りすぎ(肥満)、やせすぎを判定します。 生活習慣病では肥満の判定が重要ですが、
厳密にいうと肥満は身長と体重だけで判定できません。 たとえば、筋肉の発達した
お相撲さんがその代表で、お相撲さんの場合は過体重といいます。 肥満は体重ではなく、
体脂肪が多い状態を指します。 健診ではコンピューターで画一的に判定しますので、
過体重と肥満が混乱することがあります。病気に結びつく肥満がある場合、肥満症という
言葉が使われます。

BMI(体格指数)は体重(kg)を身長(m)の2乗で割った値で、25以上を肥満とします。
欧米の基準(30以上が肥満)より厳しいですが、日本人では少しの肥満で動脈硬化の
病気が増えるので厳しい設定になりました。

腹囲が測られるようになったのは、脂肪の付く部位によって動脈硬化の病気の起こり方
が違うからです。 腹囲は内臓脂肪の量の目安として測定されます。
メタボリックシンドロームのページもご覧下さい。

(2) 血圧測定
高血圧は動脈硬化を促進します。血圧は少々高くても症状がありませんので、
普段血圧を測る習慣のない人は、健診が高血圧を発見する良い機会になります。
これまで高血圧のある人に心筋梗塞が多いのが常識だったのですが、治療法が
進歩したおかげで、高血圧のあるなしが心筋梗塞リスクにならなくなりました。
血圧の高い人は十分に治療して下さい。高血圧のページもご覧下さい。

(3) 肝機能検査:AST、ALT、γ-GTP
AST、ALTは肝臓の細胞の中にある酵素です。肝臓の細胞が壊れると周りに中味が
ばらまかれます。 ばらまかれたAST、ALTは血液中に入ってきます。健診のAST、
ALTはこれを測定しています。 ですから、AST、ALTが高い場合は肝臓がまさに
壊れている状態
を示しています。

ASTとALTは性格が少し異なり、ASTは筋肉、赤血球が壊れても増加します。
半減期(血中濃度が半分になるのに必要な時間)にも違いがあります。 そのため、
この2つはペアで検査され、肝機能の判定に使われます。 γ-GTPはアルコール、
脂肪肝、胆道系疾患で増加します。 AST、ALTと異なり、細胞が壊れるのでなく
肝臓でたくさん造られるようになって血中に増加します。

肝障害を起こす原因を大きく分類すると、(1) ウィルス感染(B型肝炎、C型肝炎など)、
(2) 代謝性(脂肪肝など)、(3) 薬剤性(アルコール類も含みます)、(4) 自己免疫性
疾患、(5) その他 があります。脂肪肝はこれまで良性と考えられてきましたが、
中には肝硬変から肝癌まで引き起こしてくる NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)と
呼ばれる疾患が含まれることがわかってきました。生活習慣病の肝臓版です。

(4) 血清脂質:総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪
血清脂質の異常は動脈硬化を促進します。ここに異常が指摘された方は、アルコール類を
含めた食管理、運動習慣の見直しが必要です。血清脂質に異常があっても、自覚症状は
一般にありません。検査だけが異常を見つけてくれます。コントロール目標はあなたの状態
(他に動脈硬化を勧める因子が重なっている)も参考にして決められます。
脂質異常症のページ
もご覧下さい。

(5) 血糖、HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)
健診の種類によって片方だけの場合があります。糖尿病の検査項目です。糖尿病の
初期段階では自覚症状がありません。この段階で治療を始めてコントロールを良くして
おくと、将来の合併症が少なくなります。これを遺産効果あるいは代謝メモリーと呼んで
います。糖尿病の検査のページもご覧下さい。

(6) Cr(クレアチニン)
腎臓の検査で、老廃物を濾しとる能力をみます。 尿蛋白は腎臓の膜の丈夫さをみています。
Crは筋肉量の影響を受けますので、筋肉の発達した男性の方が女性より高めになります。
性別・年齢別の計算式があり、Crの値から腎臓が1分間に漉しとる血液量を推定することも
行われますが、健診ではそこまですることは少ないようです。

(7) 尿酸
尿酸の高い状態が長年月続くと、針状の尿酸結晶が関節にたまってきます。これが痛風
いう急性関節炎の原因になります。 痛風で最も多いのは、足の親指の付け根に起こる
関節炎です。 尿酸は腎臓から尿に出ていきますので、腎障害があると血液中の尿酸は
増加します。 肥満があっても尿酸は尿に出にくくなりますので、太っておられる方は体重を
管理しましょう。 一方、自分の身体内で尿酸を作りすぎる方もおられます。食事では
プリン体(分解すると尿酸になる)を多く含む食品、アルコール類に注意します。

アルコール類ですが、プリン体を含まない蒸留酒(ウィスキー、焼酎など)でも呑兵衛の人
では飲酒後に尿酸が上がります。 普段あまり飲まない人では尿酸はほとんど上がりません。
これは普段からアルコールを飲む人ではアルコール代謝が亢進して尿酸の合成が盛んに
なるためです。

(8) 血球検査:赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット、白血球数、血小板数
血球は骨髄で造られる細胞です。 最初の3つは貧血の検査です。
ヘモグロビンは血液の赤い成分で、酸素を末梢に運ぶ役割を担っています。 貧血検査
ではヘモグロビンが最も重要な検査になります。 ヘモグロビンを含む細胞が赤血球です。
ヘマトクリットは血液中に含まれる赤血球の割合を示します。 この3つの検査が基本となり、
赤血球の大きさ、赤血球1個に含まれるヘモグロビン量やヘモグロビン濃度をみて
貧血状態の判断に使われます。飲酒家では赤血球が大きくなることがあります。
なお、糖尿病の検査でHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)があります。 これはブドウ糖の
結合したヘモグロビンを測定する検査でまったく別の検査です。 貧血検査のヘモグロビン
と混同しないようにして下さい。

白血球は免疫で重要な役割を果たす細胞です。 いくつかの種類がありますが、健診では
分類検査まですることは少ないようです。 タバコをよく吸われる方で白血球が増えることが
あります。血小板は出血を止めるときに重要な働きをします。 血小板数の異常は血液の
病気を考えますが、肝硬変で血小板数が減ることは有名です。