糖尿病の検査について
糖尿病で行う検査はいくつもありますが、ここでは血糖、HbA1c(ヘモグロビン・
エーワンシー)、尿糖の検査についてお話します。
まず血糖検査です。
血糖が高いことが糖尿病の特徴ですので、血糖検査はとても大切な検査です。
採血した瞬間における糖尿病のコントロール状態を示します。
「血液に含まれる糖」はブドウ糖と呼ばれる糖です。ご飯やパンなどに含まれるデンプンは
ブドウ糖が連なった高分子化合物です。ご飯を食べると、食品中の炭水化物が消化されて
消化管の中でブドウ糖になり、小腸で吸収されます。ブドウ糖はこのように食べ物から身体
に入りますが、それ以外に肝臓でも作られます。肝臓でブドウ糖を作りすぎると、食べて
いなくても血糖が上がります。なお、砂糖はブドウ糖と果糖からできています。
次はHbA1c検査です。
血糖は常に変動しています。糖尿病をコントロールする上で、すべての時間帯の血糖が
わかると素晴らしいのですが、持続血糖測定を毎日行うことは難しいことです。1回の採血
検査で平均血糖がわかれば、これに越したことはありません。そこで平均血糖を推定する
検査が開発されました。HbA1cが代表的な検査です。HbA1cは過去数ヶ月間の平均血糖を
示します。 この検査が開発されて血糖検査の読み方が変わりました。血糖値が高い場合、
たまたま高い血糖なのか、普段から高めなのかが、判別できるようになりました。
平成24年4月1日からHbA1cの表記法が米国流の表記(NGSP)に なっています。
平成25年4月1日から「健診」の結果もNGSPで表すようになりました。
過去の検査(JDS)と今の検査(NGSP)を比べたいときは注意して下さい。
過去のHbA1c(JDS)は、今のHbA1c(NGSP)より0.4%ほど低く示されます。
米国を除く欧米では、国際標準化の合意(IFCC)に基づいてmmol/mol単位への変換が
進んでいます。外国で検査を受けられた時は注意してください。
HbA1c(NGSP) 6.5% = HbA1c(JDS) 6.1% = IFCC-HbA1c 48mmol/molです。
相互に値を変換して比べたい方はブログをご覧ください。
糖尿病コントロールの目標ですが、(1) 糖代謝の正常化を目指す場合は、HbA1c(NGSP)
6.0%未満、(2) 合併症予防のためにはHbA1c(NGSP)7.0%未満を目指します。(3) コン
トロールが難しい場合やそれほどコントロールが必要でない場合、8.0%未満が目安です。
患者さんに合わせて、この目標値は微調整されます。
もう少しHbA1c検査の説明をします。HbA1c検査の本体ですが、HbA1cは、ブドウ糖の
ついたヘモグロビンを測定しています。ヘモグロビンは肺で酸素をつかまえ、末梢に
酸素を送り届ける働きをしている、血液の赤い成分です。骨髄で造られたばかりのヘモ
グロビンは「新品」できれいですが、血液中を流れている間(120日の寿命)にいろいろな
ゴミがついてきます。このゴミのひとつがブドウ糖です。血糖が高いほど「ブドウ糖ゴミ
のついたヘモグロビン」、すなわちHbA1cが増えます。採血した血液には新しいヘモグロビン
から古いヘモグロビンまで含まれていますので、HbA1cを測ることで過去の平均血糖が
わかるわけです。なお糖尿病患者に、特有の異常ヘモグロビンがあることを世界で最初に
発見したのは日本人です(1962年柴田先生)。
尿糖検査は“血糖”や“HbA1c”よりひとつ格下の検査です。
血糖がある値(しきい値)を超えてくると、尿糖が陽性になります。このしきい値は一定で
なく、個人個人によって大きく異なることがあります。血糖が170〜180mg/dlで尿糖が出る
人が多いのですが、中には血糖が300mg/dlあっても尿糖が陰性を示す人もいます。
これは大切なことなので覚えておいて下さい。尿糖検査だけに頼って、失明した人にお会い
したことがあります。尿糖検査の良いところは、血糖より簡単に測ることができ、検査が痛く
ないことです。測定にかかる費用も血糖より安価です。
診察時に血糖を測ってもらっていて、それを補う検査として自分で尿糖を測るのを
お勧めします。“自分の血糖が○○くらいのときに、△△くらいの尿糖が出る”ことを
知っておかれると役に立ちます。
また尿糖検査は、前回トイレに行ってから今回トイレに行くまでの間の血糖に
応じた尿糖を見ています。朝食前にとった尿でも、前日に夕食を食べてから
1回もトイレに行ってなければ、夕食後の尿も混じっています。