糖尿病とインフルエンザ
糖尿病があるとインフルエンザ予防注射は是非受けて欲しいのですが、高齢者はともかく、現役年齢の人の予防接種率は高くありません。補助がないのと、忙しいからでしょうか。それとも「自分は大丈夫」と自信をもっているからでしょうか。
「現役年齢の糖尿病患者」でインフルエンザの影響を検討した報告がでましたので、紹介します(Diabetologia2014)。この報告はカナダで行われた症例対照研究です。労働年齢の糖尿病患者1人に対して年齢、性、居住区をマッチさせた対照2人を選び、2000年7月から2008年6月まで観察しています。
対象地区(マントバ)の労働年齢の糖尿病患者は全部で60,118人です。ここから58,577人を選んで対照をマッチさせ、データが揃っている56,513人と対照者110,202人を比べました。中央年齢は50-51歳、女性は48-49%です。インフルエンザワクチンを受けている人は糖尿病者で16%、対照7%です。
結果ですが、インフルエンザにかかる率は変わらないようです。しかしインフルエンザに関連した入院は糖尿病がある人で6%増えていました。
今からでは来季以降になりますが、糖尿病のある人はぜひともインフルエンザの予防接種をお勧めします。
平成26年3月7日
配偶者が糖尿病なら、糖尿病リスクが増える
2705文献から、系統的レビューができる6文献を選んでいます。2つが東アジア、2つが英国、1つが米国のヒスパニック、残り1つがスエーデンの文献です。メタ解析はこの中から糖尿病前状態と糖尿病を区別していない1文献(韓国)を除いた5文献(75,498夫婦、52-74歳)で行っています。
糖尿病の診断が申告に基づくものと、血糖測定に基づくもので多少成績は異なりますが、年齢などで補正を行った時のリスクは1.26でした(血糖測定に基づく文献では1.92)。
つまり、配偶者が糖尿病であると、ご自身の糖尿病発症リスクが26%増えます。配偶者が糖尿病なら、2人共同して生活習慣に注意していくことが望ましいと思います。
平成26年1月30日
蛋白摂取量について
(1) 腎障害がない人の理想的な蛋白摂取量はよくわかってない。
(2) 糖尿病性腎症がある人(微量蛋白尿、顕性蛋白尿)の蛋白摂取量は 通常の蛋白摂取量から、さらに下げることは推奨しない。
(3) 蛋白は血糖を上げずにインスリン分泌を増加させるので、低血糖の治療・予防に蛋白を多く含む炭水化物は使うべきでない。
米国内科学会のCKDガイドラインでも、「軽中等症のCKDでは摂取蛋白量を減らしても末期腎障害への進展には差がなかった、全死亡にも差がなかった」としています(Ann Intern Med 2013)(CKD:慢性腎臓病)。米国では蛋白摂取量の考えが変わってきています。
平成26年1月10日
尿蛋白のスクリーニング
勧告1:CKDリスクのない無症状の成人には、CKDのスクリーニングを行わない(スクリーニングは、症状が現れる前に病気を発見するための検査のことです)。
勧告2:糖尿病があってもなくても、ACE-IやARBを服用している成人には尿蛋白の検査を行わない(ACE-I、ARBは高血圧の薬で、腎保護作用があります)
勧告3:高血圧がある軽中等症CKDの人にはACE-IあるいはARBを推奨(軽中等症のCKDは推定GFRが30ml/min/1.73m2以上の方です)。
勧告4:LDLコレステロールが高い軽中等症CKDの人にはスタチンを推奨(スタチンはコレステロールを合成する経路を抑制する薬です)。
糖尿病があると腎障害を起こす危険性(リスク)が高いのですが、「ACE-IやARBを服用している人には尿蛋白を検査することに反対する」と言い切っています。「検尿してもメリットがない」という主張で、腎障害の早期発見や経過観察をする必要がないと考えています。
皆様はどうお考えでしょうか。
平成26年1月8日