院長ログ

糖尿病の歴史2 (古代エジプト)

エベルスパピルスに載っている糖尿病の薬は何でしょう、興味がありませんか?

最初の処方を見ると「血玉髄」「赤い穀類」「キャロブ」と書かれてます。血玉髄はずっと南のエレファンチンでとれる碧玉の一種で、細かい石英結晶の集まりです。酸化鉄による赤色斑点があり、血液にたとえられます。赤い穀類はおそらく小麦でしょう。インターネットで調べると「ピラミッドで見つかるのと同じ」と宣伝している赤味を帯びた小麦粉があります。残念ながら、この2つは糖尿病に効きそうな感じがしません。

気になるのはキャロブです。キャロブ(和名:イナゴマメ)に含まれるピニトールは、ブドウ糖輸送担体の亢進作用があると報告されています。ブドウ糖の輸送が良くなると、血糖が下がります。またキャロブの胚乳から得られる高分子多糖類(キャロブガム:水様性食物繊維)は食後血糖の低下に良い影響があります。このキャロブガムは、ミルクをよく吐く乳児用のミルク(森永ARミルク)にも配合されています。

次の処方は、「サイプレス」、「草の種」、「bhh灌木の根っこ」が書いてあります。あとの2つはよくわかりません。最初のサイプレスはカヤツリグサの仲間で、抜いても抜いても生えてくる雑草です。サイプレスには抗糖尿病作用が報告されている品種があります(Cyperus rotundus, Cyperus tegetum rox b)。もしかすると、糖尿病にわずかは役立ったのかもしれません。


平成26年12月27日
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