院長ブログ一覧

コーヒー消費量の変化と糖尿病発症

「コーヒーをよく飲む人は糖尿病発症のリスクが低い」ことは、いくつも論文があり、まず確からしいと考えられています。今回、コーヒーを飲む量が変わった時に糖尿病発症がどう影響を受けるかをみた論文が出ましたので、紹介します(Diabetologia 2014)。

対象は、女性がNurses Health Studyの 48,464人(1986-2006)と47,510人(1991-2007)、男性がMale Professionals Follow-up Studyの27,759人(1986-2006)です。4年ごとに食品調査をしていて、今回はコーヒー消費量の変化に着目して分析しています。エンドポイントは2型糖尿病の発症で、2年毎に質問票を回収しています。

習慣として1日1杯以上コーヒー消費量が増えた人は糖尿病発症リスクが11%減り、1日1杯以上コーヒー消費量が減った人は同リスクが17%増えました。最初のコーヒー消費量が多い人も少ない人も、同じ結果でした。


コーヒー好きの方には朗報ですが、一方で55歳以下の人では週に28杯以上コーヒーを飲む人で全死亡が増えるという報告(Mayo Clin Proc2013)もあります。1日3杯くらいまでが適当かもしれません。


平成26年5月20日

WHOが糖類制限の新しいガイドラインを作成中です

WHO(世界保健機構)が糖類制限の新しいガイドラインを作成中です。「糖類」とはブドウ糖、果糖、果糖ブドウ糖液糖、砂糖などのことです。制限されるのは、食品や飲料水に添加される糖類(単糖類と2糖類)です。果物や牛乳にもともと含まれる糖類は外れますが、果物を加工したジュース類は含まれます。蜂蜜、シロップも含まれます。

これまでのガイドラインでは摂取カロリーの10%が許容量でした。今回、これを5%にすることを提案しています。2000kcalなら100kcal、25gまでになります。清涼飲料水を1本飲むと許容量を超えてしまいます。

なかなか厳しいガイドラインです。


平成26年3月13日

ナッツ類摂取と死亡率

スペインで行われたPREDIMED研究でナッツ類が死亡率を下げることが報告されていますが、別の集団(米国)を用いた研究でも同様の結果が報告されました(NEJM2013)。

対象と観察年は、(1) 看護婦さんの集団(1980-2010年)76,464人、(2) 男性医療従事者の集団(1986-2010年)42,498人です。ナッツ類は木になるナッツ類(くるみ、ハーゼルナッツ、アーモンド)とマメ科のピーナッツを分けて検討しています。

結果ですが、木になるナッツ類とピーナッツは同じ効果がありました。まったくナッツ類を食べない人の全死亡リスクを1とすると、1週間に1回未満しか食べない人が0.93、1回食べる人が0.89、2-4回食べる人が0.87、5-6回食べる人が0.85、7回以上食べる人が0.80でした

癌、心疾患、呼吸器疾患による死亡リスクも、ナッツを食べる人でそれぞれ低くなっていました。年齢、肥満度、身体活動度、飲酒量などで分類した下位集団でも同様の結果でした(全部で11下位集団を分析)。


観察研究ですので、因果関係を示したものではありません。ナッツ類以外の影響も考えられますが、プロペンシティスコアを計算して(解析偏りをなくす統計学的手順)しても、下位集団を分析しても結果は同じですので、ナッツ類以外が影響した可能性は少ないと考えられます。

なお、この研究ではナッツ類を多く食べている人の方が痩せています。ナッツ消費と腹囲減少、体重減少の関連は他にも報告があり、カロリーの摂り方が自然に調整されているのかもしれません。


平成26年2月22日

蛋白摂取量について

米国糖尿病栄養ガイドラインが改定されました(Diabetes Care 2013)。その中の蛋白摂取量について紹介します。


(1) 腎障害がない人の理想的な蛋白摂取量はよくわかってない
(2) 糖尿病性腎症がある人(微量蛋白尿、顕性蛋白尿)の蛋白摂取量は 通常の蛋白摂取量から、さらに下げることは推奨しない
(3) 蛋白は血糖を上げずにインスリン分泌を増加させるので、低血糖の治療・予防に蛋白を多く含む炭水化物は使うべきでない。


米国内科学会のCKDガイドラインでも、「軽中等症のCKDでは摂取蛋白量を減らしても末期腎障害への進展には差がなかった、全死亡にも差がなかった」としています(Ann Intern Med 2013)(CKD:慢性腎臓病)。米国では蛋白摂取量の考えが変わってきています。


平成26年1月10日