ココナッツオイルは心血管系に悪い
ココナッツオイルはココヤシの胚乳から取れる油です。ヤシからとれる油ということで間違えやすいのですが、パームオイル(アブラヤシの果肉から取れる油)、パーム核油(アブラヤシの胚乳から取れる油)は、ココナッツオイルと別物です。
ココナッツオイルは、植物性でコレステロールを含まず、中鎖脂肪酸を多く含んでいます(中鎖脂肪酸は炭素数が中程度の脂肪酸です)。中鎖脂肪酸は長鎖脂肪酸と違った性質を持っています。そのため、飽和脂肪酸であっても中鎖脂肪酸の多いココナッツオイルは健康に良いと考える人がいます。
しかしこれは間違っていて、ココナッツオイルは心血管系疾患のリスクを上げると報告されています。ココナッツオイルのシステマティックレビューとメタ分析が報告されました(Circulation 2020)ので紹介します。
このメタ分析では16編の臨床試験をまとめています。ココナッツオイルは非熱帯性の植物油(一般の植物油)と比べて、LDLコレステロールを10.47mg/dlほど増加させました。LDLコレステロールはいわゆる悪玉コレステロールですので、LDLコレステロールを上げるココナッツオイルは身体に悪いと考えられます。なお血糖、炎症マーカー、身体脂肪にはココナッツオイルの影響がありませんでした。
飽和脂肪酸を摂ると、LDLコレステロールと共にHDLコレステロールも増加します。今回の分析でもココナッツオイルはHDLコレステロールを4.00mg/dlほど増加させています。HDLコレステロールは一般に善玉コレステロールと言われますが、論文では増加したHDLコレステロールに抗動脈硬化作用はないと考察しています。
ココナッツオイルは86.5%が飽和脂肪酸で、その半分がラウリル酸(炭素数12)です。このラウリル酸はちょっと変わった中鎖脂肪酸です。普通の中鎖脂肪酸は小腸で吸収されると門脈に入って肝臓に運ばれます。そのため代謝が速いのですが、ラウリル酸はこの経路で代謝されません。カイロミクロンになって胸管(リンパ管)を通って血中に運ばれます。これは長鎖脂肪酸と同じ経路です。
ラウリル酸は炭素数の多い長鎖脂肪酸の性格をもっており、コレステロールを上げる作用もパルミチン酸(長鎖飽和脂肪酸の代表、炭素数16)の2/3程度あると報告されています。
以上を考えますと、ココナッツオイルはあまり摂らない方が良い油のようです。
ココナッツオイルは、植物性でコレステロールを含まず、中鎖脂肪酸を多く含んでいます(中鎖脂肪酸は炭素数が中程度の脂肪酸です)。中鎖脂肪酸は長鎖脂肪酸と違った性質を持っています。そのため、飽和脂肪酸であっても中鎖脂肪酸の多いココナッツオイルは健康に良いと考える人がいます。
しかしこれは間違っていて、ココナッツオイルは心血管系疾患のリスクを上げると報告されています。ココナッツオイルのシステマティックレビューとメタ分析が報告されました(Circulation 2020)ので紹介します。
このメタ分析では16編の臨床試験をまとめています。ココナッツオイルは非熱帯性の植物油(一般の植物油)と比べて、LDLコレステロールを10.47mg/dlほど増加させました。LDLコレステロールはいわゆる悪玉コレステロールですので、LDLコレステロールを上げるココナッツオイルは身体に悪いと考えられます。なお血糖、炎症マーカー、身体脂肪にはココナッツオイルの影響がありませんでした。
飽和脂肪酸を摂ると、LDLコレステロールと共にHDLコレステロールも増加します。今回の分析でもココナッツオイルはHDLコレステロールを4.00mg/dlほど増加させています。HDLコレステロールは一般に善玉コレステロールと言われますが、論文では増加したHDLコレステロールに抗動脈硬化作用はないと考察しています。
ココナッツオイルは86.5%が飽和脂肪酸で、その半分がラウリル酸(炭素数12)です。このラウリル酸はちょっと変わった中鎖脂肪酸です。普通の中鎖脂肪酸は小腸で吸収されると門脈に入って肝臓に運ばれます。そのため代謝が速いのですが、ラウリル酸はこの経路で代謝されません。カイロミクロンになって胸管(リンパ管)を通って血中に運ばれます。これは長鎖脂肪酸と同じ経路です。
ラウリル酸は炭素数の多い長鎖脂肪酸の性格をもっており、コレステロールを上げる作用もパルミチン酸(長鎖飽和脂肪酸の代表、炭素数16)の2/3程度あると報告されています。
以上を考えますと、ココナッツオイルはあまり摂らない方が良い油のようです。
今回は取り上げませんでしたが、パームオイルも動脈硬化を促進させますので控えるのが良いでしょう。
令和2年3月22日
糖尿病患者の鶏卵摂取ガイドライン
一般人では鶏卵と動脈硬化は関連なさそうです。しかし糖尿病患者では、複数の疫学論文で「鶏卵と心血管疾患の間に関連」が示されたこともあって、諸国のガイドラインは一定していません。
米国糖尿病学会は「一般人では制限は必要がない。しかし糖尿病の人ではまだはっきりしないところがあり、まだ研究が必要」とお茶を濁しています(Diabetes Care 2019)。鶏卵制限のはっきりした推奨はありません。
英国糖尿病学会は「過去には鶏卵は制限していたが、今は制限しない。ただし調理に際して脂肪を加えないこと、加える場合は少量の多価不飽和脂肪酸にすること」としています。
オーストラリア糖尿病学会では「低コレステロール食品は人によっては良いかもしれない。しかしコレステロールよりも飽和脂肪酸の方が影響が大きく、こちらに注意を向けなさい」と優先順位を立てています。
我が国の「食品交換表」では、「血中コレステロールが正常の人でも、コレステロールの多い食品を続けて食べないように注意しましょう。血中コレステロールが高い場合には、1日のコレステロール摂取量を200mg以内に抑えるようにしましょう」となっています。
令和元年10月7日
鶏卵の影響:統計方法に問題?
鶏卵の成績が一定しない原因は「統計」に問題があるかもしれません。
米国国民健康栄養調査の18,988人を対象に「鶏卵摂取と肥満、心血管系疾患リスク」を検討した論文があります(J Nutr 2015)。この論文では (1) 通常の分析と (2) クラスター分析(類似している者同士を自動的にグループ分けする分析方法)を行っています。
通常の分析で、鶏卵摂取の有無で肥満・腹囲との関連を解析しました。そうしますと、鶏卵摂取と肥満・腹囲の間に有意な関連を認めました。
次にクラスター分析で「鶏卵を含めた食品の摂食パターン」を解析しました。そうしますと、鶏卵を摂取する人は8種類の摂食パターンに分類され、そのうち2種類の摂食パターンが鶏卵摂取と肥満・腹部脂肪と関連していました。また別の1種類のパターンが鶏卵摂取と拡張期血圧、LDLコレステロールと関連していました。
鶏卵以外にどういったものを食べるかに8通りのパターンがあり、そのパターンによって鶏卵の影響が観察されたのです。
この研究では、人口の2%足らずしかいない摂食パターンを持つ人が通常の統計分析結果に影響を与えたと結論しています。普通に統計をとると、統計学的に補正しても補正しきれず、その影響が残ってしまうのです。
悪い摂食パターンの人はファーストフードを倍くらい多く摂っています。鶏卵を摂る場合、自分が健康的な食事を摂っているか注意するのが良いかもしれません。
令和元年9月26日
とかく鶏卵の評価は難しい:コレステロール以外
鶏卵には良質の蛋白、ビタミン類、脂肪酸、コリン、抗酸化物質、微量金属が含まれています。コレステロールだけではありません。これらの栄養素はどう評価したら良いでしょうか。昔から鶏卵は栄養バランスが崩れている人には良い食品とされてきました。鶏卵を摂取する人の栄養状態によって鶏卵の効果が違ってくるかもしれません。
鶏卵に含まれる栄養素は餌の影響を大きく受けます。たとえば飽和脂肪酸の多い餌で飽和脂肪酸が多くなり、不飽和脂肪酸の多い餌で不飽和脂肪酸が多くなります(Vet Res Forum 2015)。餌にこだわった高級鶏卵を見かけますが、通常の鶏卵と比べてどれだけ身体への影響が違うのか悩みます。
魚卵は鶏卵と同様にコレステロールが多いのですが、魚卵と動脈硬化リスクを検討した論文は探しても見つかりません。魚卵はω3-不飽和脂肪酸が多く、もしこちらの影響が強いなら、魚卵は抗動脈硬化作用の食品かもしれません。興味があるのですが、残念ながら研究がありません。
米国人のための食事ガイドライン2015-2000では「鶏卵はコレステロールが多いが飽和脂肪酸が少ない、だから食べて良い」とコレステロール以外の栄養素で鶏卵の影響を説明しています。影響する栄養素は飽和脂肪酸だけでないのですが、まあ悪玉の代表ですね。
鶏卵以外の食品の影響もありそうです。鶏卵を止めると、別の食材で穴埋めをします。もし超加工食品など身体に悪い食材が増えるなら、却って良くないかもしれません。また鶏卵を食べる場合でも、何を一緒に食べるかが大切です。たとえばベーコンエッグが好きな人は、鶏卵でなくベーコンが悪さをする可能性が高いです。
令和元年9月18日