院長ログ

トランス脂肪酸と飽和脂肪酸

マーガリンやショートニングには、トランス脂肪酸が含まれています。トランス脂肪酸は炭素(C)の二重結合の部位で、水素(H)の結び付き方が互い違いになっていものを言います。トランス脂肪酸は液体である植物油を固めるときにできます。


トランス脂肪酸(TF)は動脈硬化を促進します。この知識が広まると、トランス脂肪酸が少ない食品に人気が集まります。そうすると食品会社もトランス脂肪酸が少ない商品を宣伝するようになります。

ある製パン会社の広告をみると、「トランス脂肪酸を減らす努力をしています。かわりに、飽和脂肪酸を多く含むパーム油使用比率を高めています」とあります。ところがパーム油はパルミチン酸(炭素数16の飽和脂肪酸)を多く含んでいて動脈硬化を促進する可能性があります(100g中41.8g含まれています)。

調理油の種類と心筋梗塞のリスクを検討した成績があります。


この論文(J Nutr2005)では、(1) トランス脂肪酸が多い大豆油(トランス脂肪酸が22%)、(2) トランス脂肪酸が少ない大豆油(トランス脂肪酸が5%)、(3) パーム油 の3つを比較しています。

対象は心筋梗塞を起こした人(2111人)で、同数の対照者をマッチさせています。結果は、パーム油を使用している人は、トランス脂肪酸の少ない大豆油を使用している人に比べて、心筋梗塞の起こり方が 1.33倍に増えました(結論:パーム油は動脈硬化を促進する)。パーム油を使用している人と、トランス脂肪酸の多い大豆油を使用している人では心筋梗塞のリスクは同じでした。
    
大豆油(TF5%) < 大豆油(TF22%) = パーム油


トランス脂肪酸を減らしても、飽和脂肪酸が増えると良くありません。米国の主要スーパーの商品、レストランでは、規制後に「トランス脂肪酸」だけでなく、「トランス脂肪酸と飽和脂肪酸の総量」が減少したと報告されています(N Engl J Med 2010)(注:本当は飽和脂肪酸の種類も大切です)。ノルウェーの食品産業では、トランス脂肪酸と飽和脂肪酸がコレステロールに与える計算式を用いて食品の健康度を推し量っています(Lipids 2001、この計算式は飽和脂肪酸の種類も考えています)。

我が国の食品会社もこういった検討をして欲しいと思います。


平成25年4月15日
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