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糖尿病の歴史9 (パラケルスス 1493-1541)

パラケルススはルネサンス初期のスイスの医師・錬金術師です。ハリー ポッターで有名になった「賢者の石」を持っていたと噂される人です。錬金術というと胡散臭い印象がありますが、錬金術によっていろいろな化学物質が知られるようになり、 化学が発展しました。当時の先進科学です。あのニュートンも錬金術師です。

パラケルススは「古代ローマの医者ケルススを凌ぐ」という意味を込めてパラケルススと自称しました。本名はフィリップス・アウレオールス・テオフラストゥス・ボンバストゥス・フォン・ホーエンハイムです。バーゼル大学医学部教授に就任しましたが、ガレノス医学書、スィーナー医学書を焼いて追放されました。アルコール依存症であり、特にバーゼル大学から追放されてから飲酒が多くなったようです。

当時の主流だった古代ギリシア医学は四体液説を信奉し、「病気は体液バランスの異常」と捉え、病気そのものを考えることはありませんでした。薬も「病気に対する特別作用」でなく、「体液を調整する間接的作用」と考えていました。しかし病気そのものに効く薬があり、身体が如何に働き、治るかといった物質化学的な考えが出てきました。この考え方を推し進めたのがパラケルススです。彼は生体を複雑な異なる物質からなり、それぞれが理解でき、医薬によって影響できるものと考えました。この考え方を採用して医学は大きく前進していきます。ただ彼は「生」の力、自然の叡智、人たる霊性というものも重要視しました。その意味で、現在の代替え療法に似ています(ウッド)。

パラケルススは鉱水から塩類が析出するのを観察し、塩類が身体内の固体と液体を調整していると考えました。もし固体が液体から析出すれば、人体は鉱質化し瘡蓋化する。関節炎や結石はその特徴的な病気である。もし固体が不足して液体が多ければ、身体は液体過多になる。糖尿病がそれである。糖尿病患者の尿を乾燥させると白い残渣が残るとも記しています。

ところで、「ハリー ポッターと賢者の石」ですが、英国版と米国版でタイトルが異なっているのをご存知でしょうか。英国版ではHarry Potter and the Philosopher's Stone (ハリー ポッターと賢者の石)であり、米国版ではHarry Potter and the Sorcerer's Stone (ハリー ポッターと魔法使いの石)です。賢者の石は米国の子供たちには知られていないようです。


平成27年3月27日

糖尿病の歴史8 (イスラム:スィーナー)

次はイスラム世界のイブン・スィーナー (980-1037)です。ラテン語名はアウィケンナ、全名はアブー・アリー・アル=フサイン・イブン・アブドゥッラーフ・イブン・スィーナー・アル=ブハーリー。アリストテレス新プラトン主義(万物は一者から流出したものと捉える思想)を結びつけた哲学者であり、とても賢い人です。医学はアリストテレスより難しくなく短時間で習得したと自伝で書いています。

イブン・スィーナーの書いた「医学典範」はヨーロッパでも中世を通じて医学生の教科書として用いられました。ガレノスの医学書が20分冊の大作であったのに対し、医学典範は5分冊とコンパクトであり、学生は重宝したそうです。500年後のパラケルススは古い権威の象徴として「ガレノスの医学書」と「イブン・スィーナーの医学典範」を焼きました。なお医学典範には中国医学も引用され、幅広い内容を誇っています。

イブン・スィーナーは糖尿病について包括的な症状リストを記載し、壊疽やカルブンケル、結核も合併症リストに入れました。また、尿を乾燥させると蜜のような残渣が残ると記しています(タッタサル)。治療はフェヌグリーク、ルピン(豆類)、ワームシードなどの薬草を使いました。


平成27年3月10日

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