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糖尿病の歴史2 (古代エジプト)

エベルスパピルスに載っている糖尿病の薬は何でしょう、興味がありませんか?

最初の処方を見ると「血玉髄」「赤い穀類」「キャロブ」と書かれてます。血玉髄はずっと南のエレファンチンでとれる碧玉の一種で、細かい石英結晶の集まりです。酸化鉄による赤色斑点があり、血液にたとえられます。赤い穀類はおそらく小麦でしょう。インターネットで調べると「ピラミッドで見つかるのと同じ」と宣伝している赤味を帯びた小麦粉があります。残念ながら、この2つは糖尿病に効きそうな感じがしません。

気になるのはキャロブです。キャロブ(和名:イナゴマメ)に含まれるピニトールは、ブドウ糖輸送担体の亢進作用があると報告されています。ブドウ糖の輸送が良くなると、血糖が下がります。またキャロブの胚乳から得られる高分子多糖類(キャロブガム:水様性食物繊維)は食後血糖の低下に良い影響があります。このキャロブガムは、ミルクをよく吐く乳児用のミルク(森永ARミルク)にも配合されています。

次の処方は、「サイプレス」、「草の種」、「bhh灌木の根っこ」が書いてあります。あとの2つはよくわかりません。最初のサイプレスはカヤツリグサの仲間で、抜いても抜いても生えてくる雑草です。サイプレスには抗糖尿病作用が報告されている品種があります(Cyperus rotundus, Cyperus tegetum rox b)。もしかすると、糖尿病にわずかは役立ったのかもしれません。


平成26年12月27日

糖尿病の歴史1 (古代エジプト)

最も古い糖尿病の記載は紀元前1550年頃のエベルスパピルスに見られます。エベルスパピルスはエジプトのルクソール、古代都市のテーベで1872年に発見されました。

その記載をみると、多尿をきたす疾患で、「最もひどいときは、身体がやせ衰える病気がある。その患者を診察しても、肋骨が浮き出る以外に何の所見もない」とあります。当時、多尿(尿量が多い)は頻尿(回数が多い)と区別されていません。溢尿性疾患(尿を出し切ることができず、ちょびちょび尿が出る)の記載もあり、尿が多いだけで糖尿病と診断できません。

「何の所見もない」は、外傷や明らかな病的臓器がないという意味でしょう。 「体重減少をきたす原因不明の多尿疾患」と記述されてようやく糖尿病と結びつきます。強いインスリン欠乏状態にあると思われます。

原文(カーペンター) ではこの後に呪文を唱え、薬の調合が続きます。


平成26年12月26日

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