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オメガ3脂肪酸は心血管系疾患予防に効く?、効かない?

オメガ3脂肪酸は魚油に多く含まれる脂肪酸で、代表的なものにEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)があります。市販されているサプリでもオメガ3脂肪酸は人気ですね。

最近、オメガ3脂肪酸の心血管系疾患予防効果に対するメタ分析が報告されましたので、紹介します(JAMA2018)。

一定の基準(500人以上参加、1年以上の治療観察、オメガ3脂肪酸服用、ランダム化比較試験)を満たした10論文を解析しています。全体を合わせると、61.4%が男性、平均年齢64.0歳で、平均観察期間4.4年の間に6273件の心血管系疾患のイベント(2695件の致死性心筋梗塞、2276件の非致死性心筋梗塞)、2001件の主要血管イベントがありました。

その結果ですが、心血管死にも、非致死性心筋梗塞にも、どのタイプの冠動脈疾患にもオメガ3脂肪酸サプリの効果はありませんでした。また、全体でもサブグループ分析でも主要血管イベントに有意な差はありませんでした。

ということで、このメタ分析論文では「オメガ3脂肪酸のサプリに効果なし」と結論しています。

組み入れられた試験を眺めてみます。
服用したEPAの量を見ますと、1800mg/日と服用量の多いJELIS試験では主要心血管系イベントが2割減少していました。次に服用量が多いDOIT試験(1150mg)も好ましい傾向が得られています。論文では「参加人数が563人と少なく有意差が出なかった」と結論づけています。次に多いのはGISSI-HF試験とGSIIS-P試験(ともに850mg)で、両論文ともに有意差をもって死亡、心血管死が減少しています。

もしかすると、本当の結論は「オメガ3脂肪酸の中途半端なサプリは効果がない」かもしれません。

EPAの服用量を多くした試験が進行中です。近いところではREDUCE-IT試験がほぼ終了しています。スポンサーは以前に紹介したアマリン社です。今年末(2018年)に解析結果がでるようで、この結果に期待したいと思います。


平成30年6月22日

新しい糖尿病治療薬の期待:アッチリ先生の講演から

5年前にインスリン分泌細胞の脱分化(先祖返り)について紹介しました。「グルカゴンの不思議」というタイトルでしたが、覚えておられますでしょうか。

簡単に説明しますと「血糖が上がっている状態が続くと、血糖を下げるインスリンを分泌する細胞が、血糖を上げるグルカゴンを分泌する細胞にかわってしまう」という、糖尿病にとってはとんでもない現象です。

この研究を行ったのがアッチリ先生です。アッチリ先生は今年の日本糖尿病学会(平成30年5月)に来日されて特別講演をされました。その中でこの脱分化がどうして起こるのか詳しく説明され、今後の糖尿病治療の展望にこの脱分化を防ぐ薬を上げられました。

アッチリ先生はこの他にも、新しいタイプのインスリン感受性促進薬が可能であることを基礎実験で示され、また1型糖尿病の治療についても言及されました。

どこまで現実の治療薬としての研究が進んでいるかはわかりませんが、できるといいですね。ぜひ期待したいと思います。


平成30年6月6日

GLP-1製剤の飲み薬が開発中です

糖尿病薬の一つにGLP-1製剤があります。バイエッタ、リキスミア 、ビクトーザ、ビデュリオン、トルリシティが代表的な薬です。インクレチン作用を高めるという点でDPP-4阻害薬と共通しますが、DPP-4阻害薬より効果が強いお薬です。残念なことにDPP-4阻害薬と違って注射薬しかありません。

現在、GLP-1製剤の飲み薬の開発が進められています。以前にセマグルチド注射薬(ノボ社:日本未発売)を紹介しましたが、この薬を飲み薬にした治験が第3相まで進行しています。今年に発表が予定されていて、うまく進めば2020年に発売予定です。

服用してから30分は食事が摂れないこと、吐き気をおこす可能性なども言われていますが、DPP-4阻害薬を上回る効果が期待されています。


注)DPP-4阻害薬はジャヌビア、グラクティブ、エクア、ネシーナ、トラゼンタ、テネリア、スイニー、オングリザ、それにザファテック、マリゼブなどです。

注)第3相治験は、その薬を使うであろう患者を対象に、有効性、安全性の検討を主な目的にして、それまでの治験より大きな規模で行われます。第3相治験が無事通過できれば、承認に向けた手続きが行われます。


平成30年2月23日

GLP1製剤による心血管イベント、心血管死の抑制(続)

以前に「リキスミア(リキセナチド)は心血管系イベントを抑制しないが、ビクトーザ(リラグルチド)、セマグルチドはこれを抑制する」ことを紹介しました。今回はこの続きです。リキスミアの1週間製剤であるビデュリオンの報告が出ました(NEJM 2017)。

この研究では、14,752人(北米25%、南米18%、ヨーロッパ46%、アジア10%)、平均62歳(38%が女性)、平均肥満指数(BMI)32kg/m2、平均罹病機関12年の人が対象です。

主要評価項目は心血管系疾患による死亡、非致死性の心筋梗塞・脳卒中です。平均3.2年観察していますが、ビデュリオンに主要評価項目の抑制効果はありませんでした(主要評価項目はビデュリオン群で11.4%、偽薬群で12.2%におこり、相対リスク0.91)。

これまでの成績と合わせますと、ビクトーザやセマグルチドには心血管系イベントの抑制効果があり、リキスミア、ビデュリオンにはなさそうです。製品による違いでしょうか。それとも研究デザインの違いでしょうか。同じ使うなら、抑制効果のありそうな薬剤の方を使いたいですね。


平成29年10月6日

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