肥満パラドックスは存在しない:太っているのはやはり良くない
- 25未満の人で1.0(基準)
- 25〜29.9の人で 1.06(1.03〜1.08)、
- 30.0〜34.9の人で 1.24(1.20〜1.29)、
- 35.0以上の人で 1.73(1.66 〜1.80)でした。
食事だけでは片手落ち
遺伝子リスクのある人は、ない人に比べてフライ(揚げ物)で太りやすい
遺伝子リスクがあると、生活習慣病への影響が強くなります。今回はフライ(揚げ物)と肥満の関連を、遺伝子リスクから検討した成績を紹介します(BMJ 2014)。
対象は、Nurses Health Studyの9,623人(女性)、Health Professinals Follow-up Studyの6,379人(男性)、それとWomen Genome Health Studyの21,421人(女性)です。肥満に関連する遺伝子は32個の遺伝子変異を扱っています。
遺伝子リスクのスコアの高い人は低い人に比べて、BMI(体格指数、肥満指数)が週に4回以上フライを食べる人で、1.0(男性)、0.7(女性)ほど、週に1回未満しか食べない人で、0.5(男性)、0.4(女性)ほど、高くなります。
3集団を合わせて検討すると、遺伝子変異10個ごとに フライを食べる回数が週に1回未満の人で1.1、2-3回の人で1.6、4回以上の人で2.2ほどBMIが高くなります。肥満リスクは、それぞれ1.61、2.12、2.72です。つまり、遺伝子リスクがある人はリスクのない人より (1)太りやすく、(2)フライ物を食べる回数が増えるとさらに太りやすくなります。
個々の遺伝子でリスクの大きさは異なりますが、もし遺伝子リスクをもっておられるなら(検査に保険が効かないので推測になりますが)、周囲の人に比べてそれほど食べておられなくても控えるのが良いでしょう。
平成26年5月21日
人工甘味料について
糖尿病では「甘いもの」を求められる方が多いように思います。上に述べたように「甘み」を求めるのはとても自然で本能的なことです。問題点は、おいしく満足できるので、つい食べ過ぎてしまうことです。そのため、砂糖に代えて人工甘味料をお勧めすることが多いのです。今回は人工甘味料のお話です。
(質問)人工甘味料はダイエットに良いでしょうか。
甘味料の安全性の質問でなく、「やせるのに役立つでしょうか」という質問です。不思議ですが、単純にイエスとならないのです。ダイエットソーダを多く飲む人にメタボリックシンドロームや肥満が多いという成績があります。ダイエットソーダを飲む本数と肥満の発症が直線的に増加する成績もあります。「人工甘味料は体重増加に結びつく」というタイトルの記事まであります(JAMA2008;299:2137)。
どうも人工甘味料を摂ると、代償的に食欲が増加して食べ過ぎが増えるようです。食べ過ぎてしまう理由として、8つの可能性が考えられています。その中で興味深いのが、「舌」と「頭」が異なる反応を示すことです。その成績をご紹介します。
遺伝子操作をして味覚をなくしたマウスは、水と砂糖水を区別できません。しかし6日間条件付けすると、この2つを区別できるようになります。味覚がないのに、条件付け後は砂糖水を選ぶのです。
頭の中に島前部という薬物渇望や依存と関連している部位があります。この島前部は、人工甘味料よりも砂糖で強く反応します(ヒトの成績)。また中脳ドーパミン報酬系と呼ばれる快楽中枢があります。この報酬系は砂糖で反応し、人工甘味料で反応しません(ヒトの成績)。
まだいろんな成績がありますが、簡単にまとめますと、
(1) 人工甘味料は舌で甘く感じます。
(2) 身体はカロリーが入ってくると期待しますが、実際は入ってきません。
(3) そのため、身体は騙された状態になっています。「甘み」に伴う報酬が得られず、「渇望」も実は満たされていません。
(4) そのため報酬を求めて食欲が亢進するというのです。
人工甘味料で育てると、間食後の自然な食欲低下が起こらなくなる成績(ネズミ)もあり、人工甘味料の食欲への影響は大きいようです。
どうも人工甘味料を過信してはいけないようです。甘みに対する欲求が強くなり過ぎてないか、食べ過ぎ状態になってないか、確認しながら上手に使うようにしましょう。
平成24年8月19日