肥満パラドックスは存在しない:太っているのはやはり良くない
「太ると生活習慣病が多くなる」ことは良く知られています。しかし一方で、「太っているほうが死亡リスクが小さい」という疫学調査もあります。この2つの話は相容れないもので、肥満パラドックスと呼ばれています。
考えてみますと、体重は健康を害しても減少します。こういう人たちが多く紛れ込むと「痩せている人の死亡リスクが高く評価」され、「太っている人の方が死亡リスクが少ない」と誤ってしまいます。
このようなバイアス*を避けるために「過去の最大BMI」と死亡リスクの関連を検討した成績が発表されました(Ann Intern Med 2017)。大半の研究は「調査開始時のBMI*」を計算に用いています。「過去16年の最大BMIを用いた」ことがこの研究のポイントです。
バイアス:本来あるべき理由ではなく、別の何らかの理由で統計が影響を受けること。バイアスがあると誤った解釈がなされます
BMI(体格指数、肥満指数):体重(kg) /(身長(m)の2乗)
対象は看護師研究および男性医療従事者研究の合計225,072人です。2年毎に体重、生活習慣(食事、運動、喫煙など)、医学的問題点、服用薬を聞き取っています。身長は調査開始年だけ測定しています。
12年の経過観察中に32,571人が亡くなられました。「過去最大BMI」が25未満の人を基準に検討しますと、
全死亡リスクは「過去最大BMI」が
- 25未満の人で1.0(基準)
- 25〜29.9の人で 1.06(1.03〜1.08)、
- 30.0〜34.9の人で 1.24(1.20〜1.29)、
- 35.0以上の人で 1.73(1.66 〜1.80)でした。
これは男性でも女性でも同様のパターンでした。
また「調査年のBMI」を計算に用いますと、太っている人の方が死亡リスクが0.96と低く、肥満パラドックスが認められました。
計算に用いるBMIを適切に設定すると肥満パラドックスは認めなくなります。太っているのはやはり良くないようです。
平成29年12月15日
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