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禁煙の勧め: 禁煙して太っても喫煙を続けるより健康

「禁煙したら体重が増えてメタボになるので、禁煙は自分にとって良くない」という喫煙者の言い訳がありました。この「言い訳」を許さない論文(NEJM 2018)が出ました。

禁煙すると体重が増え、糖尿病も増えます。しかしそれにも関わらず「心血管死亡・全死亡が減少する」ことが分かりました。喫煙を続ける方が身体に悪いのです

この研究の対象集団(コホート)は看護師研究のコホート2つ、および男性医療従事者研究のコホート1つ、計3つです。この3つは疫学研究ではとても有名な米国のコホートです。

禁煙して2-6年たつと、2型糖尿病を発症するリスクは1.22と増加しました。解析しますと、糖尿病の発症リスクは5-7年でピークになり、その後徐々に減少します。糖尿病発症のリスクは体重増加と直接に関連していて(2/3が体重増加で説明可)、体重が増えなかった禁煙者ではリスクが増加しませんでした。

禁煙して糖尿病が増えましたが、心血管死亡や全死亡は一時的にも増えることがありませんでした。喫煙を続けた人と比べて
心血管死リスクは

0.69(体重増加なしの人)、
0.47(体重増加が0.1-5.0kgの人)
0.25(体重増加が5.1-10.0kgの人)
0.33(体重増加が10.0kg以上の人)

と減少していました。6年以上禁煙を続けている人のリスクは0.50でした。全死亡についても同様の結果でした。ぜひ禁煙しましょう。


平成30年9月27日

肥満パラドックスと心血管系疾患

以前に「肥満パラドックス」を紹介しました。肥満パラドックスは「太っていると生活習慣病が増えて死亡リスクが増えるはずなのに、疫学調査では太っている方が長生きする」という表面上の矛盾のことです。実際には肥満パラドックスはありません。 肥満パラドックスは「体調を崩して体重が減った人」が「痩せている群」に紛れ込むために生じると考えられています。

この仮説を支持する論文をもう一つ紹介します(PLOS ONE 2017)。対象は50歳以上の米国人30,529人(退職者健康研究)です。心筋梗塞、うっ血性心不全、脳卒中、虚血性心疾患を起こしている人を対象に肥満と死亡リスクを検討しました。正常体重と肥満度クラス1(BMI30以上、35未満)の比較です。

調査開始時の体重で検討しますと、太っている方が18-36%ほど死亡が少なくなり、明らかな肥満パラドックスが認められました。これが従来見ていたものです。

脳心血管系の病気になると体重が減ります。そこで病気が診断される前の体重をもとに肥満と死亡リスクを検討しました。そうしますと肥満パラドックスが消失しました

やはり太っているのは良くありません。


平成30年6月29日

肥満パラドックスは存在しない:太っているのはやはり良くない

「太ると生活習慣病が多くなる」ことは良く知られています。しかし一方で、「太っているほうが死亡リスクが小さい」という疫学調査もあります。この2つの話は相容れないもので、肥満パラドックスと呼ばれています。

考えてみますと、体重は健康を害しても減少します。こういう人たちが多く紛れ込むと「痩せている人の死亡リスクが高く評価」され、「太っている人の方が死亡リスクが少ない」と誤ってしまいます。

このようなバイアス*を避けるために「過去の最大BMI」と死亡リスクの関連を検討した成績が発表されました(Ann Intern Med 2017)。大半の研究は「調査開始時のBMI*」を計算に用いています。「過去16年の最大BMIを用いた」ことがこの研究のポイントです。

バイアス:本来あるべき理由ではなく、別の何らかの理由で統計が影響を受けること。バイアスがあると誤った解釈がなされます
BMI(体格指数、肥満指数):体重(kg) /(身長(m)の2乗)


対象は看護師研究および男性医療従事者研究の合計225,072人です。2年毎に体重、生活習慣(食事、運動、喫煙など)、医学的問題点、服用薬を聞き取っています。身長は調査開始年だけ測定しています。

12年の経過観察中に32,571人が亡くなられました。「過去最大BMI」が25未満の人を基準に検討しますと、

全死亡リスクは「過去最大BMI」が
  • 25未満の人で1.0(基準)
  • 25〜29.9の人で 1.06(1.03〜1.08)、
  • 30.0〜34.9の人で 1.24(1.20〜1.29)、
  • 35.0以上の人で 1.73(1.66 〜1.80)でした。

これは男性でも女性でも同様のパターンでした。
また「調査年のBMI」を計算に用いますと、太っている人の方が死亡リスクが0.96と低く、肥満パラドックスが認められました。

計算に用いるBMIを適切に設定すると肥満パラドックスは認めなくなります。太っているのはやはり良くないようです。


平成29年12月15日

食事だけでは片手落ち

運動を大きく分けると、フィットネス(有酸素運動:心肺機能を高める)と筋トレ(レジスタンス運動:筋肉をつける)に分けられます。かつては「歩け歩け運動(有酸素運動)」で、歩いていればそれで良いと考えられていましたが、今は両方とも行うのが良いと考えられています。年配の人によくお話ししますが、筋トレをせずに歩くだけでは転倒骨折リスクが減りません。

今回は「減量時の運動」の話です。運動をせずに食事だけで減量しようとすると筋肉や骨密度が大きく減ります。このことはとくに筋肉や骨の弱い年配の人で問題になります。では減少を防ぐためには、どのような運動を付け加えるのが良いでしょうか。 最近発表された論文を紹介します(NEJM2017)。

この論文では160人の肥満高齢者が参加しています。体重管理プログラムをおこなってもらい、それに3種類の運動のいずれかを行ってもらいました。運動は「有酸素運動」、「レジスタンス運動」、「有酸素+レジスタンス運動」です。体重管理をしない対照群をおいています。運動期間は26週、週3日の運動です。体重管理プログラムは必要カロリーから500-750kcal減らし、良質のタンパク質摂取(1g/kg/日)になるよう栄養士と相談し、1500mgカルシウム、ビタミンD1000IUのサプリをとってもらいました。

まず比べたのは身体活動機能(PPT)です。PPTは、標準の「15.2m歩く、上着を脱いで着る、硬貨を拾う、椅子から立ち上がる、本を持ち上げる、階段を1段上る」に加えて「階段を4段昇り降りする」、「360度向きを変える」ことをしてもらってスコア付けしています。プログラムを達成したのは141人、PPTスコアは運動群すべてが対照群より良い結果でした。最も良かったのが「有酸素+レジスタンス運動」(21%増加)で、次に「有酸素運動」(14%増加)、「レジスタンス運動」(14%増加)でした。

そのほかにも幾つかの項目を比べています。最大酸素消費量は「有酸素+レジスタンス運動」、「有酸素運動」 > 「レジスタンス運動」でした。筋力増強は「有酸素+レジスタンス運動」、「レジスタンス運動」 > 「有酸素運動」でした。体重は全運動群で9%減、対照群では減りませんでした。

体重管理プログラムで残念なことは、運動しても除脂肪体重と骨密度の減少を止められなかったことです。ただ減少の程度は「有酸素+レジスタンス運動」、「レジスタンス運動」で少なく、「有酸素運動」で大きめでした(骨密度はそれぞれ、1%減、0.5%減、3%減)。除脂肪体重が減っても筋力が増えているので、転倒リスクが減る可能性がありますが、実際に減るかどうかまでは分かりません。

まとめますと、減量時に運動しますと身体活動機能(PPT)が改善します。減量に伴い除脂肪体重と骨密度が減りますが、「有酸素+レジスタンス運動」を行うとその悪さが少なくなります。もっと効果的な蛋白・ビタミンDの摂りかたがあるかについては、研究の発展に期待します。


平成29年6月8日

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