院長ログ

新しい肥満治療薬の開発:レタトルチドとスルボデュチド

今春にGLP-1/GIPの2重作動薬マンジャロが発売されました。マンジャロは血糖を下げる薬ですが、強い減量効果が期待されています。

マンジャロのような GLP-1作用を含む、強い減量効果を持つ新しい薬が開発中です。糖尿病患者を対象にした治験が行われていますが、肥満患者に対象を絞った治験も行われていて、肥満治療薬も狙っているようです。

その一つがレタトルチドです。レタトルチドは GLP1/GIP/グルカゴンの3重作動薬で、リリー社が開発しています。

もう一つがスルボデュチドです。GLP-1/グルカゴンの2重作動薬で、ベーリンガーインゲルハイム/ジーランド社が開発しています。

まずレタトルチドの成績(NEJM 2023)を紹介します。

第2相治験で338人(男性51.8%)が参加しました。BMI(体格指数)が30以上、あるいはBMI27-30で過体重に関連した健康障害を持つ成人が対象です。

レタトルチド 1、4、8、12mgあるいは偽薬を毎週注射して、48週経過観察しました。

48週後の体重減少は、レタトルチド 1、4、8、12mg群と偽薬群でそれぞれ、 -8.7、-17.1、-22.8、-24.8、-1.6%でした。

12mg群は平均体重108kgですので、ざっとみて27kgくらいの減量です。

48週後に15%以上の体重減少を来していた人はレタトルチド4、8、12mg群と偽薬群でそれぞれ、60、75、83、2%でした。

スルボデュチドの体重減少効果も強いようです。米国糖尿病学会で発表され(2023年6月)、会社のHPに内容が公開されています。

こちらも第2相治験で、対象は糖尿病のない肥満・過体重の人(387人、68%が女性)、平均49歳、平均体重106kg、平均BMI 37です。68% が女性でした。

スルボデュチド初期投与量は0.6、2.4、3.6、4.8mgです。

スルボデュチド4.8mgを毎週皮下投与し、その投与を継続した群は、46週間で体重の18.6%が減少しました。

20週かけてスルボデュチドの用量を調整し、その後4.8mgを維持投与した群では、46週経過した時点で、「体重の 5%以上、10%以上、15%以上減量した人はそれぞれ98%、82%、67%でした。

どちらの薬剤も消化管症状が主な副反応で、これは想定範囲内のものでした。
前途有望です。


令和5年7月10日

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