果物、果糖、砂糖について (米国糖尿病学会の新しい栄養勧告)
先々月、果物の話題(果物の種類について、果物と糖尿病)を提供しました。米国糖尿病学会から新しい栄養勧告が発表されましたので、その中から、果糖、砂糖の項目を追加紹介します(Diabetes Care 2013)。
この勧告では 果糖を2種類に分けています。
「果物に代表される遊離果糖は、同カロリーの砂糖やデンプンに比べて血糖コントロールを改善する。摂取量が全カロリーの12%超でない限り、中性脂肪増加を来さない。」 → つまり、カロリーに注意すれば果物の強い制限は不要でしょう。
「一方で砂糖、果糖ブドウ糖液糖を含む飲料は体重増加をきたし易く、メタボリックシンドロームの原因になりやすい。」→ つまり、清涼飲料水は控えるのが賢明です。
砂糖の項目では、「食品中のデンプンを砂糖に変えても、カロリーの35%以内なら血糖や脂質に影響を与えない。しかし砂糖を含む食品はカロリーの高い食品が多く、カロリーの注意と「健康的な食事の摂り方」から外れない注意が必要。」→ つまり、砂糖は健康的食事から外れる食品に多く使われていて注意が必要ですが、通常の調理に使う分はそれほど神経質になる必要はなさそうです。
DASH食についてですが、「糖尿病患者におけるDASH食はあまりエビデンスがない。小研究では、HbA1c、血圧、その他の心血管系リスクの減少が認められている」となっています(DASH食:果物、野菜、低脂肪乳製品、全粒穀類、トリ肉、魚、ナッツに重点)。
平成25年11月11日
この勧告では 果糖を2種類に分けています。
(1) 果物にみられるような自然界の遊離果糖、
(2) 砂糖、果糖ブドウ糖液糖
「果物に代表される遊離果糖は、同カロリーの砂糖やデンプンに比べて血糖コントロールを改善する。摂取量が全カロリーの12%超でない限り、中性脂肪増加を来さない。」 → つまり、カロリーに注意すれば果物の強い制限は不要でしょう。
「一方で砂糖、果糖ブドウ糖液糖を含む飲料は体重増加をきたし易く、メタボリックシンドロームの原因になりやすい。」→ つまり、清涼飲料水は控えるのが賢明です。
砂糖の項目では、「食品中のデンプンを砂糖に変えても、カロリーの35%以内なら血糖や脂質に影響を与えない。しかし砂糖を含む食品はカロリーの高い食品が多く、カロリーの注意と「健康的な食事の摂り方」から外れない注意が必要。」→ つまり、砂糖は健康的食事から外れる食品に多く使われていて注意が必要ですが、通常の調理に使う分はそれほど神経質になる必要はなさそうです。
DASH食についてですが、「糖尿病患者におけるDASH食はあまりエビデンスがない。小研究では、HbA1c、血圧、その他の心血管系リスクの減少が認められている」となっています(DASH食:果物、野菜、低脂肪乳製品、全粒穀類、トリ肉、魚、ナッツに重点)。
平成25年11月11日
DPP-4阻害剤は心血管系イベントを増やさない、減らさない
ジャヌビア、グラクティブ(シタグリプチン)が心血管系イベントを減少させないことを紹介しました(H25/6/19)が、ネシーナ(アログリプチン)、オングリザ(サキサグリプチン)も同様に心血管系イベントを改善しないことが明らかになりました(NEJM 2013)。
DPP-4阻害剤に大血管合併症の減少を期待していた人には残念ですが、心血管系イベントを増やさないことが確認され、安心して使えることがわかりました。ただオングリザで心不全による入院が増えていました。これについては、本当に意味のある増加かどうか、次の確認研究が必要です。
両研究とも実薬群の方がHbA1cが改善しています。HbA1cの差が0.3%と小さく、短期間の研究ということもありますが、HbA1cが下がっても心血管イベントは変わらないようです。心血管イベントを減らすには、血圧や脂質異常のコントロールが大切です。
なお両研究ともDPP-4阻害剤で懸念される膵炎、膵癌は増えていませんでした。
平成25年10月23日
オングリザの研究は、16,492人の糖尿病患者を平均2.1年観察しています。主要エンドポイントは心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳梗塞です。ネシーナの研究は、5,380人の心筋梗塞直後の糖尿病患者を平均18ヶ月観察しています。主要エンドポイントは心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳梗塞です。両研究とも実薬群とプラセーボ(偽薬)群を比較し、両群間で心血管系イベントに差がありませんでした。
DPP-4阻害剤に大血管合併症の減少を期待していた人には残念ですが、心血管系イベントを増やさないことが確認され、安心して使えることがわかりました。ただオングリザで心不全による入院が増えていました。これについては、本当に意味のある増加かどうか、次の確認研究が必要です。
両研究とも実薬群の方がHbA1cが改善しています。HbA1cの差が0.3%と小さく、短期間の研究ということもありますが、HbA1cが下がっても心血管イベントは変わらないようです。心血管イベントを減らすには、血圧や脂質異常のコントロールが大切です。
なお両研究ともDPP-4阻害剤で懸念される膵炎、膵癌は増えていませんでした。
平成25年10月23日
糖尿病では脳血管障害と心血管障害、どちらが多い?
我が国では、脳血管障害が心血管障害より多いと言われてきました。血圧の目標基準を決める際にも、日本人の特性としてこのことを考えるよう、提案されています。でも最近のデータを眺めるとこの傾向が変わってきているようです。
一昨年の日本動脈硬化学会のシンポジウムで、糖尿病患者の脳心血管系疾患発症率が報告されました(札幌医大 斎藤Drが発表)。
驚くことは、「糖尿病患者では特に冠動脈疾患が増える」ことです。その結果、心血管障害が脳血管障害より多くなっています。今年(H25)の日本糖尿病学会で、JDCSの新しいデータが追加発表されました。それによると、「心血管障害:脳血管障害:下肢血管障害が6:3:1」とさらに冠動脈疾患の比率が増えています(東京慈恵会医大 西村Drが発表)。動脈硬化性疾患の構造が欧米に似てきているようです。
平成25年10月9日
一昨年の日本動脈硬化学会のシンポジウムで、糖尿病患者の脳心血管系疾患発症率が報告されました(札幌医大 斎藤Drが発表)。
その発表では、(1) Japan Diabetes Complications Study(JDCS)における日本人糖尿病患者、(2) 久山町研究における日本人一般住民、(3) 英国の糖尿病患者(UKPDS研究) の3集団における脳心血管系疾患発症率を調べています。
冠動脈疾患発症率(1000人・年あたり)は、「日本人糖尿病患者では 9.6 (男性11.2,女性7.9)。日本人一般住民では男性3.5,女性1.8。英国糖尿病患者では17.4」でした。脳卒中発症率(1000人・年あたり)は、「日本人糖尿病患者では 7.6 (男性8.5,女性6.6)。日本人一般住民では、男性5.3,女性3.9。英国人糖尿病患者では5.0」でした。
驚くことは、「糖尿病患者では特に冠動脈疾患が増える」ことです。その結果、心血管障害が脳血管障害より多くなっています。今年(H25)の日本糖尿病学会で、JDCSの新しいデータが追加発表されました。それによると、「心血管障害:脳血管障害:下肢血管障害が6:3:1」とさらに冠動脈疾患の比率が増えています(東京慈恵会医大 西村Drが発表)。動脈硬化性疾患の構造が欧米に似てきているようです。
平成25年10月9日
果物の種類について
実は果物が糖尿病を悪くするか、はっきりしていません。最近、果物の種類によって糖尿病発症のリスクが異なることが発表されました(BMJ 2013)ので、紹介します。
対象と観察年は、(1) 看護婦さんの集団(1984-2008年)66,105人 (2) 看護婦さんの集団(1991-2009年) 85,104人 (3) 男性医療従事者の集団(1986-2008年)36,173人です。観察開始時に主要な慢性疾患がない人たちで、2型糖尿病の発症を観察しています。
10種類の果物の摂り方を調べています。糖尿病リスクは、1週間で3皿(〜450g)摂取する毎に、ブルーベリー 0.74(0.66-0.83)、ブドウ/干しブドウ 0.88(0.83-0.93)、プルーン 0.89(0.79-1.01)、リンゴ/西洋ナシ 0.93(0.90-0.96)、バナナ 0.95(0.91-0.98)、グレープフルーツ 0.95(0.91-0.99)、モモ/プラム/アプリコット 0.97(0.92-1.02)、オレンジ 0.99(0.95-1.03)、イチゴ 1.03(0.96-1.10)、カンタロープメロン 1.10(1.02-1.18)でした。
何によって果物の差が出たかはわかっていません。アントシアニンという色素が糖尿病リスクを下げると言われたこともありますが、今回の研究でははっきりしませんでした。グリセミックインデックス、グリセミック負荷(グリセミックロード)も糖尿病リスクと関連がありませんでした。グリセミックインデックスは炭水化物による血糖の上がりやすさの指標で、グリセミック負荷はその指標に摂取量を掛けたものです(果物によるグリセミック負荷は全体の負荷量からみると10%くらいで大きくありません)。
一方で、果物ジュース(リンゴジュース、オレンジジュース、グレープフルーツジュース他)の糖尿病リスクは1.08(1.05-1.11)でした。
結論は特定の果物摂取が糖尿病リスク低下と関連していて(とくにブルーベリー、ブドウ、リンゴがよろしい)、果物ジュースは糖尿病リスク上昇と関連 していました。
平成25年9月27日
対象と観察年は、(1) 看護婦さんの集団(1984-2008年)66,105人 (2) 看護婦さんの集団(1991-2009年) 85,104人 (3) 男性医療従事者の集団(1986-2008年)36,173人です。観察開始時に主要な慢性疾患がない人たちで、2型糖尿病の発症を観察しています。
10種類の果物の摂り方を調べています。糖尿病リスクは、1週間で3皿(〜450g)摂取する毎に、ブルーベリー 0.74(0.66-0.83)、ブドウ/干しブドウ 0.88(0.83-0.93)、プルーン 0.89(0.79-1.01)、リンゴ/西洋ナシ 0.93(0.90-0.96)、バナナ 0.95(0.91-0.98)、グレープフルーツ 0.95(0.91-0.99)、モモ/プラム/アプリコット 0.97(0.92-1.02)、オレンジ 0.99(0.95-1.03)、イチゴ 1.03(0.96-1.10)、カンタロープメロン 1.10(1.02-1.18)でした。
何によって果物の差が出たかはわかっていません。アントシアニンという色素が糖尿病リスクを下げると言われたこともありますが、今回の研究でははっきりしませんでした。グリセミックインデックス、グリセミック負荷(グリセミックロード)も糖尿病リスクと関連がありませんでした。グリセミックインデックスは炭水化物による血糖の上がりやすさの指標で、グリセミック負荷はその指標に摂取量を掛けたものです(果物によるグリセミック負荷は全体の負荷量からみると10%くらいで大きくありません)。
一方で、果物ジュース(リンゴジュース、オレンジジュース、グレープフルーツジュース他)の糖尿病リスクは1.08(1.05-1.11)でした。
結論は特定の果物摂取が糖尿病リスク低下と関連していて(とくにブルーベリー、ブドウ、リンゴがよろしい)、果物ジュースは糖尿病リスク上昇と関連 していました。
平成25年9月27日