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日本人はどれだけのトランス脂肪酸を摂っているか

農林水産省が実施した調査研究(2008年)では、日本人のトランス脂肪酸摂取量は平均0.92〜0.96g/日と推定されています。これは平均総エネルギー摂取量の0.44〜0.47%に相当します。

WHOは総エネルギー摂取量の1%を超えないように勧告しています。これを基に判断をしますと、日本人のトランス脂肪酸摂取量は少ないようです。しかし食生活には個人差が大きく、平均が小さいことと、みんなが大丈夫なことは異なります。

別の調査では、特に女性においてトランス脂肪酸摂取量が問題にすべき量であることが報告されています(J Epidemiol 2010)。この論文では30-69歳の225人(成人)の16日間の食事記録をもとにトランス脂肪酸摂取量を推定しています。国内4箇所の成績です。


脂肪摂取量とトランス脂肪酸摂取量(総エネルギー摂取量との比)の平均値は、(1) 女性で、56.9 g/日 (27.7%) と 1.7 g/日 (0.8%)、(2) 男性で、66.8 g/日 (25.5%) と 1.7 g/日 (0.7%) です。トランス脂肪酸の平均摂取量は少ないのですが、女性の24.4%、男性の5.7%が総エネルギー摂取量の1%を超えています。特に都市部、30-49歳の年齢層においてトランス脂肪酸の摂取量が多くなっています。女性では菓子類、男性では油脂類からの摂取が多いようです。

日本食品分析センターによるトランス脂肪酸含量を紹介しておきます(平成19年3月)。マーガリン: 8.1(0.4-13.5)、ショートニング: 13.6(1.2-31.2)、ビスケット類: 1.8(0.04-7.3)、その他菓子類: 0.49(0-12.7)、ケーキ・ペストリー類: 0.7(0.25-0.7)、マヨネーズ: 1.2(0.49-1.65)(g/100g)です。


農林水産省はトランス脂肪酸だけを問題にしてはいけないと述べています。これは確かにそのとおりで、脂質全体や塩分摂取などにも目を配る必要があります。また低トランス脂肪酸にしたいがために、飽和脂肪酸を増やしている商品もあります。前に紹介しましたが、飽和脂肪酸の多いパーム油はトランス脂肪酸を22%含む大豆油と同程度に心筋梗塞を増やします(J Nutr2005)。

食事全体のバランスに関心を持ちましょう。片寄った食事になっている人は、これを機会に考えて見ましょう。


平成25年4月26日
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