院長ログ

糖尿病の歴史33 インスリンの命名(1909年)

膵臓を摘出すると糖尿病が発症することが明らかにされ、膵島が糖尿病に関与しているらしいことまでわかってきました。しかし膵臓の役割はまだまだ不明確でした。「糖尿病は神経の病気」とするクロード ベルナールの呪縛が解けておらず、膵摘後の糖尿病も腹部神経叢が障害されたからだと考える人が多かったのです。

その中でインスリンが命名されました。命名者はベルギーの生理学者 ジーン ド メイヤー(1878-1934)です。彼は膵島に「血糖を下げるホルモン」があると推定し、1909年にフランス語で"insuline"と名付けたのです。1916年にはエドワード シャーピー シェーファーも同様の考えを示し、同じくインスリンと名付けています(参考:1921年にインスリンを発見したバンティング、ベストはアイレチン(Iletin)と呼びました)。

メ イヤーは膵臓の抽出物が糖尿病(膵臓摘出動物)の尿糖を下げ、症状を改善させることを見出しました。この抽出物は膵管を結紮し、膵臓が萎縮したのちに調製したものです。さらに肝グリコーゲン合成が膵臓の抽出物によって直接的に促進されることを発見しました。糖低下作用を抑制する血清も開発しています(インスリン抗体?)。彼の研究は第一次世界大戦によって阻まれ (研究所は死傷者処理所に衣替え)、先に進むことができませんでした。

平成28年1月25日
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