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ナッツ類摂取と死亡率

スペインで行われたPREDIMED研究でナッツ類が死亡率を下げることが報告されていますが、別の集団(米国)を用いた研究でも同様の結果が報告されました(NEJM2013)。

対象と観察年は、(1) 看護婦さんの集団(1980-2010年)76,464人、(2) 男性医療従事者の集団(1986-2010年)42,498人です。ナッツ類は木になるナッツ類(くるみ、ハーゼルナッツ、アーモンド)とマメ科のピーナッツを分けて検討しています。

結果ですが、木になるナッツ類とピーナッツは同じ効果がありました。まったくナッツ類を食べない人の全死亡リスクを1とすると、1週間に1回未満しか食べない人が0.93、1回食べる人が0.89、2-4回食べる人が0.87、5-6回食べる人が0.85、7回以上食べる人が0.80でした

癌、心疾患、呼吸器疾患による死亡リスクも、ナッツを食べる人でそれぞれ低くなっていました。年齢、肥満度、身体活動度、飲酒量などで分類した下位集団でも同様の結果でした(全部で11下位集団を分析)。


観察研究ですので、因果関係を示したものではありません。ナッツ類以外の影響も考えられますが、プロペンシティスコアを計算して(解析偏りをなくす統計学的手順)しても、下位集団を分析しても結果は同じですので、ナッツ類以外が影響した可能性は少ないと考えられます。

なお、この研究ではナッツ類を多く食べている人の方が痩せています。ナッツ消費と腹囲減少、体重減少の関連は他にも報告があり、カロリーの摂り方が自然に調整されているのかもしれません。


平成26年2月22日

欧州高血圧ガイドライン

欧州でも昨年に高血圧ガイドラインが発表されています。欧州高血圧学会と欧州心臓学会が作成し、収縮期血圧140mmHg未満(いくつかの例外あり)、拡張期血圧90mmHg未満(糖尿病があると85mmHg未満)としました。

さて、高齢者はどうなっているでしょうか?

80歳未満の高齢者は140-150mmHgを目標とする。元気な高齢者は140mmHg未満もよいが、衰えている高齢者は個別に目標を決める。80歳以上の高齢者は、身体・認知状態がよければ140-150mmHgとする。


高血圧の治療開始は160mmHgからが勧められています。140-160mmHgで治療を開始すべきかはエビデンスがありませんが、降圧剤を使用して特に問題がない場合は考えて良いとしています。欧州高血圧ガイドラインは、80歳まで140mmHg未満とするASH/ISHガイドラインより、60-80歳は150mmHg未満とするJNC8ガイドラインに近く感じます。


平成26年2月14日

米国高血圧ガイドラインの不一致

米国の高血圧ガイドラインは、2003年にJNC7が発表されました。2008年にJNC8の準備のためNHLBIが組織され、2010年にJNC8が発表される予定でした(JNC:米国高血圧合同委員会、NHLBI:国立心肺血液研究所)。ところがJNC8の発表がずるずると遅れて2013年12月にASH/ISH(米国高血圧学会/国際高血圧学会)のガイドラインが発表され、これに一日遅れてJNC8ガイドラインが発表になりました。

このASH/ISHとJNC8のガイドラインは見解が異なっており、さらに悪いことにJNC8の5委員(29%)が少数意見としてJNC8ガイドラインに反対意見を発表しています(Annals of Internal Medicine 2014)。前代未聞の状況です。

どこが問題でしょうか。特に話題になっているのは高齢者の降圧目標です。ASH/ISHガイドラインは、80歳以上で150/90mmHgです。JNC8のガイドラインでは、60歳以上から150/90mmHgです(但し糖尿病や慢性腎障害があれば140/90mmHg)。つまり、60歳〜80歳の降圧目標がASH/ISHでは140/90mmHg、JNC8では150/90mmHg なのです。

60歳以上の研究はSHEP、Syst-EUR、80歳以上はHYVET研究しかありません。140mmHgが良いか、150mmHgでも良いかを決める明確な根拠はありません。専門家の意見の違いがガイドラインの違いです。

平成26年2月13日

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