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米国高血圧ガイドラインの不一致

米国の高血圧ガイドラインは、2003年にJNC7が発表されました。2008年にJNC8の準備のためNHLBIが組織され、2010年にJNC8が発表される予定でした(JNC:米国高血圧合同委員会、NHLBI:国立心肺血液研究所)。ところがJNC8の発表がずるずると遅れて2013年12月にASH/ISH(米国高血圧学会/国際高血圧学会)のガイドラインが発表され、これに一日遅れてJNC8ガイドラインが発表になりました。

このASH/ISHとJNC8のガイドラインは見解が異なっており、さらに悪いことにJNC8の5委員(29%)が少数意見としてJNC8ガイドラインに反対意見を発表しています(Annals of Internal Medicine 2014)。前代未聞の状況です。

どこが問題でしょうか。特に話題になっているのは高齢者の降圧目標です。ASH/ISHガイドラインは、80歳以上で150/90mmHgです。JNC8のガイドラインでは、60歳以上から150/90mmHgです(但し糖尿病や慢性腎障害があれば140/90mmHg)。つまり、60歳〜80歳の降圧目標がASH/ISHでは140/90mmHg、JNC8では150/90mmHg なのです。

60歳以上の研究はSHEP、Syst-EUR、80歳以上はHYVET研究しかありません。140mmHgが良いか、150mmHgでも良いかを決める明確な根拠はありません。専門家の意見の違いがガイドラインの違いです。

平成26年2月13日
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