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糖尿病の新しい薬 ツイミーグ

糖尿病の新しい薬(ツイミーグ:イメグリミン)が認可直前です。

ツイミーグはメルク・セローノ社が作りました。ポクセル社に特許が渡され、ポクセル社から大日本住友製薬が導入して薬が開発されました。 

ツイミーグは全く新しい構造の薬(グリミン:テトラヒドロトリアジン系)です。メトホルミンと似た構造を持っていてメトホルミンと良く似た作用を持ちますが、独自の作用があります。

ツイミーグはNAD+合成酵素とミトコンドリアに作用して薬効を示すと考えられます。膵β細胞に働き、ブドウ糖濃度に依存したインスリン分泌を促します。膵臓以外の作用では、肝臓に働いて糖新生を抑え、筋肉に働いて糖の取り込みを促進します

注目されるのがミトコンドリアの保護作用です。ミトコンドリアは細胞の中にあって、酸素を使ってエネルギーを産生する小器官です。ツイミーグは活性化酸素の産生を抑え、ミトコンドリアDNAを増やし、ミトコンドリア機能を改善します。

ツイミーグの副作用としては、悪心、下痢、便秘(1〜5%未満)などがあります。低血糖(6.7%)も報告されています。消化管症状が多いことはメトホルミンと似ていますね。また腎機能の悪い人には使えません。

作用機序をみるととても期待できる薬です。


令和3年9月4日

耐糖能の日内リズム

夜遅くに食べない方が身体に良いと言われます。血糖についてもそうで、同じものを食べても日中と夜中で血糖の上がり方が異なり、夜中の方が血糖が上がりやすくなっています。

食事をすると身体が温まることはご存じですね。食べることによって熱が産生されるためですが、夜間ではこの熱産生が少なくなります。熱産生に使われなかったエネルギーは身につく方向に向かいます。夜に食べると太りやすい理由の一つです。

明け方になるとインスリンの必要量が増してきます。特にインスリン作用が不足している糖尿病患者では、食べてないのに血糖が上昇します。1型糖尿病でよく見られますが、この現象は「暁現象」と呼ばれています。成長ホルモンやコルチゾールなど「インスリンと作用が拮抗するホルモン」が影響しています。

糖の動きからみると、肝臓で糖新生(新しく糖が合成される)が亢進し、末梢組織で糖の取り込みが減少することが原因です。血糖が上がるのは食べ物の影響だけでないのですね。

ほとんどすべての生物は1日周期の生体リズムを持っています。この日内リズムを制御している「時計遺伝子」が分かってきました。時計遺伝子はすべて転写因子です。転写因子はDNA(遺伝子本体)に結合して、DNAの発現を調整する働きを持ちます。時計遺伝子には、Clock, Bmal1, Per, Cryがあります。

インスリン分泌も時計遺伝子の影響を受けることが分かってきました。膵島でインスリンを産生している細胞はβ細胞です。β細胞で「clock転写因子」の発現を抑制する、つまりclock遺伝子が働かない状態にしますと、インスリン分泌が抑制されます。インスリン分泌に時計遺伝子が大きく関わっている証拠です。

β細胞では上に述べた細胞内システムだけなく、身体全体のシステムも日内リズムの調節に関わっています。身体全体のシステムには自律神経系を介するもの、内分泌(ホルモン)を介するものがあります。

健康にとって日内リズムを維持することは大切です。そのためには決まった時間に起きて光を浴び、規則的に食べ、夜遅くの食事を控えるのが良いでしょう。


令和3年7月6日

高齢者の持効型インスリン

インスリンが発見されてしばらくは、頻回注射が基本でした。当時は使い捨て注射器やペン型注射器はありません。準備も大変でしたし、注射針も太いものでした。1日に何回も注射するのはとても苦痛でした。そのため1日1回で済むインスリンが熱望され、作用時間の長いNPHインスリンやレンテインスリンが開発されました。

1日1回のインスリン注射で済むということは、細かな血糖調整が難しいことでもあります。そのため、糖尿病合併症が抑えきれず、NPHインスリンやレンテインスリンの時代はいわゆるインスリン暗黒時代でもありました。

長く効くインスリンに、ウルトラレンテインスリンがありました。レンテインスリンよりも結晶が大きく作用時間が長いのですが、皮膚からの吸収が大きく変動し、レンテインスリンほど血糖の上昇を抑えきることができず、持効型インスリンの試みは失敗に終わりました。

インスリンはプロインスリンが分解して作られます。プロインスリンはインスリンと比べて作用が数倍長くもちます。これも持効型インスリンとして使えないか試されたのですが、成長因子としての作用があり、動脈硬化促進や発癌性が懸念されて中止になりました。

今は多様なインスリンが選べる時代です。20-24時間作用型、さらには40時間作用型のインスリンが開発されています。注射器具も改良され、頻回注射が現実的になっています。ちなみに1型糖尿病では1日4回注射が基本です。

高齢者でインスリン注射を始める人が増えています。そのとき従来のNPHインスリンより、新しい持効型インスリン(ランタス、レベミル)の方が重篤な低血糖が少ないという論文(JAMA Intern Med 2021)が出ました。これまでも同様の論文が出ていますが、対象を高齢者に限ったこと、食前インスリンの併用の有無を分けて分析したことが新しいようです。

2007年から2019年のMedicare(健康保険)データの解析で、65歳以上でインスリンを初めて使った人(575,008人)が対象です。古いデータも使われているようですが、ランタスの発売が2000年です。結論はこれまでと同様です。食前インスリンを併用していない場合、持効型インスリンの方がNPHインスリンより3割ほど低血糖リスクが少なくなりました

NPHインスリンでインスリン治療を始めることはずいぶん前からしていません。ランタス、さらに作用時間の長いトレシーバで始めています。

最後になりましたが、今年はインスリン発見100周年です。多様なインスリンが開発されてきたことに感謝します。


令和3年4月16日

ジャヌビアの多面的な作用

ジャヌビアがコロナウイルス感染症の死亡率を下げる論文を紹介しましたが、移植免疫の抑制にも効果があるようです。

免疫に関わるT細胞(リンパ球)の表面にCD26という分子があります。活性化されたT細胞の表面に多く出てきますので、T細胞を活性化させる抗原として知られています。またCD26の発現が多いT細胞が自己免疫疾患で増加していることが報告されています。

ジャヌビアはご存じの方も多いと思いますが、DPP4(dipeptidyl peptidase 4:ジペプチジル ペプチダーゼ 4)阻害剤です。DPP4はインスリン分泌を補助するインクレチンを分解します。ジャヌビアはインクレチンの分解を抑えてインスリン分泌を促進し、血糖を下げます。

CD26とジャヌビアの関連はどこにあるのでしょうか。CD26とDPP4は別個に研究されてきましたが、実はこの2つは同一分子だったのです。そのため、ジャヌビアなどDPP4阻害薬の開発にあたって、免疫に関わる副作用もチェックされました。

ラット臓器移植モデルでDPP4阻害剤を投与すると急性拒絶反応が抑えられ、移植片が長持ちすることが知られています。今回、ヒトにおいてジャヌビア(DPP4阻害薬)が臓器移植に伴う急性拒絶反応を抑制することが報告されました(NEJM 2021)。対象は36人、シクロリムス、タクロリムスと併用です。少人数で比較対象の群は設けていませんが、興味深い結果ですね。


令和3年3月31日