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健康的な食事は慢性腎臓病を減らす

健康的な食事が慢性腎臓病(CKD)を減らすと発表されました(JAMA2013)。この研究は大規模なONTARGET試験(25,620人)から出てきた研究です。明らかな腎障害のない2型糖尿病患者(6213人)が対象です。健康的な食事の判定はmAHEIスコア*で行っています。mAHEIスコアは食事ガイドライン遵守度を示すスコアで、高いスコアは野菜などの健康的な食品が多く、揚げ物などの不健康な食品が少ないことを示します(あくまで米国人基準による健康的食事です)。


平均5.5年観察し、
(1) 生存していて、CKDの発症あるいは進展がない 
(2) 生存していて、CKDの発症あるいは進展がある 
(3) 死亡 を見ています。いろいろな指標(スコア)で患者を3群に分け、高スコア群と低スコア群を比較しています。

(1) 健康的な食事をしている人は、CKDリスク、死亡リスクが少ない(OR0.74、0..61)。週に3皿以上の果物を摂っている人はCKDリスクが少ない。
(2) 総蛋白、動物性蛋白の摂取が少ないとCKDリスクが増える(OR1.16)。
(3) 塩分摂取量はCKDリスクと関連しない。
(4) 中等度のアルコール摂取はCKDリスクと死亡リスクを減少(OR0.75、0.69)


これまで蛋白質の摂取量が増えると腎に負担がかかり、腎症の進展に影響すると考えられていましたが、この研究ではそうでもなさそうです。塩分(NaCl)は死亡リスクにU字型の影響があり、多くても少なくても良くないようです

観察研究であり、お互いに影響しあう因子が多い食事内容の研究ですので、「これで解決」というほどの説得力はありませんが、与えるインパクトは大きいように思います。

*「米国人のための栄養ガイドライン」をどれだけ守っているかを計算するのに米国農務省が作ったのがHealthy Eating Index (HEI)。それを修正したのがAlternative Healthy Eating Index (AHEI)、さらに修正したのがmodified Alternative Healthy Eating Index (mAHEI)です。

平成25年9月11日
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