院長ログ

カロリー制限と長寿

一般的に10-40%のカロリー制限をすると、生存寿命および健康寿命が長くなります。カロリー制限は「老化」および「老化に伴う病気」を研究する方法にも使われ、たとえばサーチュインという長寿遺伝子はカロリー制限で活性化します。

霊長類においてもカロリー制限の効果が報告され、ウィスコンシン国立霊長類研究センター(WNPRC)の研究は新聞にも載って話題を呼びました。アカゲザルで30%のカロリー制限をすると、長生きして毛並みの色艶も良いのです(Science2009)。

今回は米国国立老化研究所(NIA)の成績を紹介します(Nature2012)。同じアカゲザルの研究ですが、「カロリー制限しても寿命が変わらなかった」という結果です。どうして正反対になったのでしょうか。論文を読みますと、 (1) 餌が異なること、 (2) 比較対照(自由摂食群)の「自由摂食のさせ方」が異なること、が重要のようです。

WNPRC研究の餌は精製素材です。蛋白はラクトアルブミン、油はコーン油を用いています。炭水化物はコーンスターチと砂糖で、28.5%が砂糖です。NIA研究の餌天然素材です。天然素材は微量元素、植物性化学物質を含みます(注:植物性の抗酸化物質は活性化酸素の毒性を消去します)。蛋白は小麦、とうもろこし、大豆、魚、アルファルファ由来です。魚は8-12%の油を含み、オメガ3脂肪酸を含みます(注:オメガ3脂肪酸は抗動脈硬化作用を持ちます)。砂糖は3.9%しか含みません。

次に自由摂食の方法ですが、WNPRCと異なり、NIAは「ほぼ自由摂食」にしています。「ほぼ自由摂食」とは、年齢と体重に基づいて計算したカロリーの自由摂食です。つまり、軽い制限がかかっています(注:ラットでは、軽いカロリー制限でも長寿効果がある、との報告があります)。

以上を踏まえて、NIAの研究を深読みすると、「軽いカロリー制限、かつ精製食品を避ける食事をすれば、30%という強いカロリー制限をしなくても十分その効果が期待できる」のかもしれません。もしそうならうれしいですね。決して「カロリー制限が無意味」ではないと思いますので、ご注意下さい。


平成25年7月8日
一覧に戻る