院長ログ

地中海食と心筋梗塞予防: リヨン研究

7カ国研究によって「地中海地方では心筋梗塞の起こり方が少ない」ことが分かりました。そして、これには食事の違いが大きく影響していると考えられました。

もしこれが本当なら、地中海食は心筋梗塞の予防に使えるはずです。最初に地中海食を試したのは、リヨン心臓食研究です(Lancet 1994)。

対象は心筋梗塞を起こした605人で、心筋梗塞の再発や死亡を観察しています。地中海食はクレタ島の食事を目指し、「果物、野菜、魚を増やし、赤身肉を減らし、バターやクリームをキャノーラ油からとったマーガリンに換える」ことを勧めました(本来はオリーブ油ですが、オリーブ油が嫌いな人に配慮してキャノーラ油)。比較の対象は、米国心臓病学会提唱の心臓食です。

結果ですが、心筋梗塞、死亡とも地中海食で7割も少なくなりました。あまりに劇的な結果で、研究を延長することは倫理的な面から中止されました。


地中海に面した国は15以上あり、単一の地中海食はありません。そうすれば地中海食の何が心筋梗塞予防に効いたのかが大切です。いろいろ調べてみると、動脈硬化を減らしているのは単独の食品ではありませんでした。オリーブ油も有意差が出ず(p=0.14)、単独効果は少なかったのです(BMJ 1995)。このことがわかって、地中海食の研究では「地中海食の特徴がいくつ当てはまる」か、スコア計算するようになりました。

Trichopoulouらによる地中海食の特徴を紹介します。
 1. 一価不飽和脂肪酸/飽和脂肪酸の比が大きい*
 2. 中等度のアルコール消費(赤ワイン)
 3. 豆類が多い
 4. 穀類の消費が多い
 5. 果物、ナッツ類が多い
 6. 野菜が多い
 7. 魚が多い
 8. 肉類やその加工品が少ない
 9. 低〜中等度の乳製品(羊、ヤギ)消費


* 地中海食の一価不飽和脂肪酸は、オリーブ油に含まれるオレイン酸です。
* オリーブ油

一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸の割合が7-8割と豊富です。地中海地方で摂られているオリーブ油の量ですが、たとえばイタリアでは北部で26g/日、南部で49g/日ほど植物油を摂っています(Eur J Clin Nutr 1992)。すべてオリーブ油と仮定しますと、29-54ml/日、200-377ml/週のオリーブ油になります。

* キャノーラ油(食用菜種油)Canola oil

カナダで品種改良されたエルカ酸の少ない食用菜種油です。Can(ada) o(il) l(ow) a(cid) から名付けられました。一価不飽和脂肪酸であるオレイン酸の割合は6割です。リヨン研究によって、オリーブ油の代わりになることがわかりました。



平成25年3月13日
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