院長ログ

ノセボ効果:偽薬(プラセーボ)で副作用を経験する

偽薬(プラセーボ)でも病気が良くなることがあります。これをプラセーボ効果(偽薬で治る効果)と言います。これと反対に偽薬で病気が悪くなる、あるいは副作用が出ることをノセボ効果と呼びます。もちろん、偽薬が副作用を引き起こすことはありません。「副作用があるのではないか」と思う不安な気持ちが元になって、悪い作用が起こってくるのです。

今回ノセボ効果をまとめた論文が発表されましたので、簡単に紹介します(Trials 2018)。

この論文では「ノセボ効果」と「系統的」の言葉が載っている論文を検索し、20編の系統的レビュー論文を探し出しました。これらの論文をまとめますと、ノセボ効果は49.1%の人に見られ(中央値)、5%の人がノセボ効果のために偽薬の服用を中止しています。「副作用が出ない偽薬」で「服用中止するほどの副作用」が出た人が、20人に1人いるわけです。かなり多いですね。

偽薬でなくて普段のお薬でも、「この薬で副作用が出るのではないか」と思うだけで副作用が出ます

その例の1つがスタチンによる筋症状です(Lancet 2017)。スタチンはコレステロールを下げる薬で、筋障害を起こすことがあります。そのためスタチンを処方する時は前もって副作用を説明します。自分の飲んでいる薬が偽薬か実薬かわからない場合は、偽薬と実薬で筋症状の訴えに差がありません(偽薬=実薬)。しかし飲んでいる薬が偽薬か実薬か分かっている場合は、実薬で筋症状の訴えが多くなります(偽薬<実薬)。


平成31年3月29日

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