院長ログ

バイオ後続品インスリン:超速効型も開発

以前にリリー社によるバイオ後続品(バイオシミラー)インスリンの紹介をしました。先発品はサノフィ社のランタス(持効型インスリン)です。お返しというわけではないでしょうが、サノフィ社がリリー社のヒューマログ(超速効型インスリン)のバイオ後続品を作成しました。まだ未発売ですが、まず欧州で認められる方向です。

サノフィ社は世界有数の製薬会社で、自社先発品としてアピドラ(超速効型インスリン)を販売しています。2つの超速効型インスリンをサノフィ社がどう売り分けるのか、ちょっと気になります(アピドラの方がヒューマログより吸収がちょっと速いようです)。

インスリン製剤もバイオ後続品が続けて出るようになり、市場が成熟してきた感じがします。持効型と超速効型のインスリンがあれば、かなり多くのことができます。我が国では2社からランタスのバイオ後続品が販売されていますが、超速効型インスリンのバイオ後続品も使えるようになると良いですね。

現在インスリンは利益追求のための商品です。とくに米国はひどい状態で、インスリンの値段が10年間で3倍と、特許で守られている以上に上がりました。米国糖尿病学会がインスリンの値段を下げるようキャンペーンしていてびっくりします。リリー社のバイオ後続品はインスリンの値段破壊の突破口として働いているようです。

注: 米国は日本と違って薬価は自由競争です。インスリンの値段が上昇したのは、自由競争が働かなかったためです。

インスリンはバンティングとベストが発見し、コリップが人に使えるまで純粋にしました。3人は粗悪品が出回るのを怖れてインスリン特許をとりました。実はバンティングは最初は特許をとることすら拒否していました。しかし共同発見者の名前を伏せて特許がとられたなら、ベストが偽証罪で告発される可能性があり、バンティングも特許人になりました。3人はその特許をトロント大学にそれぞれ1カナダドルで譲っています。本当にわずかな額ですね。インスリンが必要な人がすぐにインスリンを使えるように、という配慮からです。


平成29年7月29日


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