ピオグリタゾン(アクトス)とNASH
チアゾリジン系の糖尿病の薬は評価が二転三転しています。ロシグリタゾン(日本で未発売)は心血管リスクが高いと強く非難されませしたが、濡れ衣でした。ピオグリタゾン(アクトス:武田薬品)も膀胱癌、心不全、骨折リスクが指摘されています。膀胱癌リスクは、「最近の前向き試験では増加なし」の成績ですが、まだ決着がついていません。
昨年のNEJMにピオグリタゾンが脳卒中を予防することが発表され、ピオグリタゾン評価の時間的経過は「奇妙な長旅」と評されました。
今回のお話はNASH治療薬としてのピオグリタゾンの位置づけです。2012年にチアゾリジン系薬剤のメタ分析論文が発表され、同薬剤の有用性が示されました。その後発表論文が増え、それらをメタ分析した新しい論文(JAMA Internal Med 2017)が出ましたので紹介します。
メタ分析は複数の研究結果をより高い立場からまとめて分析する方法で、質の高い分析法とされています。NASHとはアルコールを飲んでいないのに、アルコール多飲者と同様の脂肪肝〜肝硬変(肝線維化の進行)〜肝癌をきたしてくる病気です。NASHによる肝癌は増加傾向にあります。
論文では8編のランダム化試験をメタ分析し、合計516人のNASH患者を6-24ヶ月間観察、(1) 進行した肝線維化の改善(F3-F4からF0-F2)、(2) どのステージからでもいいですが、少なくとも1ポイントの改善、(3) NASHの消失を見ています。
ロシグリタゾンでは改善なし。 ピオグリタゾンで肝線維化の改善が認められ、オッズ比でみると、(1) は3.15、(2) は1.66、(3) は3.22 でした。糖尿病のない人でも同様(それぞれ、2.95、1.76、3.40)でした。
最終的な臨床像(腹水、肝性脳症、肝移植、肝に関連した死亡など)までみていませんが、「NASHの線維化」は有用な代理エンドポイントです。現時点では糖尿病がない人にピオグリタゾンをお勧めしませんが、糖尿病の人でピオグリタゾンが使える人にはNASH治療にピオグリタゾンが有用かもしれません。
平成29年3月10日
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