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糖尿病性網膜症による失明

糖尿病は失明に至る病気です。失明する病気は緑内障が第1位であり、糖尿病は第2位と言われています。しかしどれだけの人が糖尿病で失明しているか実はよくわかっていません。糖尿病による失明は、1988年視覚障害の疾病調査研究で約3000人です。社会福祉行政業務報告では、2006年で2679人2009年で2221人です。

視覚障害認定交付に基づく報告では、障害認定を申請しない人は数に入りません。本当の失明者数を調べるには、しらみつぶしに住民を調べる必要があります。全員を調べることはできませんので、ある地域で抽出した住民をその地域人口の代表として調べることになります。人口を基礎とした疫学調査です。

この方法で行われた眼科調査に多治見スタディ(2000〜2001)があります(Ophthalmology 113:1354―1362, 2006)。この調査では、40歳以上の日本人の失明率は0.14%、低視力率は0.39%です。これは世界的にみて低いそうです。

疫学調査による評価は、上に述べた一般的見解と大きく異なります。失明原因のトップは白内障で、次が緑内障、強度近視です。糖尿病性網膜症による失明は上位にきません。WHO基準による低視力(視力:0.05〜0.3)では、糖尿病は6位(5.3%)です。同基準による失明(視力:〜0.05)では、不明まで含めた17位までにありません。日本の人口(40歳以上)を単純に掛けますと、糖尿病による低視力者は全国で約15,000人になります。

最近の糖尿病網膜症の治療は網膜外科から網膜内科へ変遷しつつあるそうです。侵襲(身体を傷つけること)が少ない治療法が進歩し、失明者がさらに少なくなることを祈ります。


平成24年11月30日
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