院長ログ

サンドラットのお話

イスラエルの砂漠にサンドラットという動物がいます。サンドラットは餌が自由に食べられるように飼うと糖尿病になります。自然界にいるときの量に餌を制限すると糖尿病が治ります。

餌の少ない過酷な環境に適応した動物が、食べ物がふんだんにある環境になるとどうなるかをよく示しています。ヒトではどうでしょうか。

米国アリゾナにピマインディアンが住んでいます。ピマインディアンは糖尿病が多いことで有名な部族です。しかし昔から糖尿病が多かったわけではありません。1900年過ぎに水が出なくなって農業ができなくなりました。政府から補助金が出るようになり、働かなくて食べられるようになりました。西欧化した食事の影響もあり、肥満が増えて糖尿病も増えたのです。今は成人の38%が糖尿病です。

ピマインディアンはメキシコにも住んでいます。こちらは伝統的生活を営んでいます。糖尿病の人は少なく、わずか6.9%です。

ピマインディアンは倹約遺伝子を持っています。倹約遺伝子は少ないカロリーで生きていくために適応(変化)した遺伝子です。食べ物の少ない環境ではエリート遺伝子ですが、飽食環境ではメタボリックシンドロームを引き起こす遺伝子です。

日本人も飢饉を何度も経験していて過酷な環境に適応しています。ピマインディアン と同じように倹約遺伝子を持つ人が多いことが知られています。あまり食べていないのに太ると言われる方は、もしかすると倹約遺伝子を持っているかもしれません。自分の体質が倹約遺伝子を持つと思われる人は、どうぞ十分に生活管理に気を配ってください。

注:倹約遺伝子の検査は保健がききませんので、検査自体はあまりお勧めしていません。


平成24年12月31日
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