院長ログ

鶏卵を良く食べている人は糖尿病発症が多い(米国だけ)

これまで「糖尿病の方は鶏卵を少し控えるのが良い」とお話ししてきました。覚えてられますでしょうか。今回の話題は、「鶏卵摂取」と「糖尿病発症」の関連です。

今年になって3編ほど立て続けに論文が出ました(Diabetologia、Am J Clin Nutr、Br J Nutr)。3編とも同じ結論ですが、「鶏卵摂取」と「糖尿病発症」の関連は地域差があり、米国においてだけ関連があるようなのです。

Diabetologia論文は、(1) スエーデン人の集団 と (2) これまでの発表論文のメタ分析です。(1) のスエーデン人集団では、45-79歳の男性39,610人を1998年から2012年まで観察しました。その間に4,173人が2型糖尿病を発症しましたが、鶏卵摂取との間に関連を認めませんでした。

Diabetologia論文 (2) のメタ分析では、12集団の前向き研究をメタ解析しています。合計287,693人を観察し、16.264人の糖尿病発症をみています。米国人対象の5研究で「鶏卵摂取が週3個増えるたびに糖尿病が1.18倍増え」、米国以外の7研究では0.97と増えませんでした。

Am J Clin Nutr論文はメタ分析の報告です。合計12集団、219,979人を観察し、8,911人の糖尿病が発症しています。「最も鶏卵摂取が多い群」と「最も少ない群」を比較しますと、「米国では鶏卵摂取が多い群で糖尿病発症が1.39倍増え」、米国以外では0.89と増えませんでした。米国人対象の研究をさらに解析しますと、週3個未満の鶏卵摂取で糖尿病が増えず、3個以上摂取すると増えていました。

Br J Nutr論文もメタ分析の報告です。この論文では416論文からデータを抽出しています。合計251,213人を観察し、12,156人に糖尿病が発症しています。分析結果は、1日あたり1個鶏卵摂取が増えると「米国では糖尿病発症が1.47倍に増え」、米国以外では0.94と増えませんでした。

なぜ 米国だけ成績が異なるのか理由は不明です。卵の摂り方の食文化が異なるのかもしれません。日本人のデータが気になりますが、鶏卵摂取と糖尿病発症に関連はありませんでした(Br J Nutr 2014)。

注:メタ分析(メタ解析)は、複数の研究の結果を統合し、より高い見地から分析する統計方法です。


平成28年6月9日

一覧に戻る
ブログ月別