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SGLT2阻害薬とGLP1作動薬の併用

まだ学会発表(American College of Cardiology 2022)の段階ですが、ちょっとびっくりする発表がありましたので紹介します。

動脈硬化が進んでいる糖尿病の人を対象に行われた「SGLT2阻害薬とGLP1作動薬」の研究で、両者を併用した人は単独使用の人に比べて全死亡、脳心血管イベントが大幅に減少したという発表です。

SGLT2阻害薬、GLP1作動薬は共に心血管イベントを減らします併用するとさらに良い結果が得られるのではないかと考えて研究が始まりました

対象は米国退役軍人です。虚血性心疾患、脳卒中、末梢血管障害を有する糖尿病患者で、SGLT2阻害薬、GLP1作動薬のみを処方されている121,174人を選びました。43.7%がSGLT2i単独、29.3%がGLP1作動薬、26.9%が両薬併用でした。

この中から傾向マッチングさせた3群(SGLT2阻害薬単独処方群、GLP1作動薬単独処方群、両者併用処方群)各5,277人を選びました。マッチングは年齢、性別、心左室機能(LVEF)、HbA1c、収縮期血圧、それに冠動脈疾患か末梢動脈疾患に基づいて行われました。

平均年齢は67歳、97%が男性、BMI 34kg/m2と肥満があり、HbA1c7.9%、腎機能eGFR55-66ml/分/1.73m2、LVEF 55%で、平均追跡期間は902日でした。

SGLT2阻害薬は主にジャディアンスが処方されていました。GLP1作動薬(全て注射薬)はビクトーザ、オゼンピック、トルリシティが多く、バイエッタは5%未満でした。

主要評価項目は、全死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中です12ヶ月後の評価で、併用群はSGLT2阻害薬単独群に比べて46%、GLP1単独群に比べて主要評価項目が49%少ない結果でした

併用による減少は主に全死亡の減少によるもので、全死亡だけに限るとそれぞれ83%、81%少ない結果でした。

まだ学会発表の段階で、はっきりしたことは言えないのですが、併用療法は単独療法より、脳心血管保護作用が強い可能性があります。今後の研究に期待します。


令和4年5月9日

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