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糖尿病の歴史7 (カッパドキア:アレタイオス)

カッパドキアのアレタイオスは2世紀頃の人と言われています。彼は「カッパドキアの」という形容詞をつけて呼ばれます。カッパドキアは現在のトルコの地方都市で、当時はローマ帝国の最北東の属州でした。カッパドキアは初期キリスト教の遺跡でも有名です。

彼は「慢性疾患の治療」という本の中で、糖尿病の症状を生き生きと描写しました。この描写は現代医学からみてもよく観察しています。糖尿病は英語で ”diabetes” と呼ばれますが、この言葉の起こりについても書いています。残念なことに、彼の本は16世紀半ばまで西洋社会に知られませんでした(ガレノスが引用していない)。

糖尿病は驚異に満ちた病気である。この病気はそれほど多くない。肉体・四肢が尿に溶けていく。その原因は腹水(水腫)のように寒と湿である。その行先はありふれたもので、すなわち、腎臓と膀胱である。患者は尿を作ることを止めることができない、尿の流れは絶えることなく、あたかも水道の蛇口から水が流れ出るごとくである。病気はゆっくりと進行し、完成するまで長い時間がかかる。しかし病気が完成すると身体の溶けかたは速くなり、死が間近になる。人生は嫌悪に満ち、苦痛なものになる。喉の渇きは癒されることがなく、過度に水を飲む。それでも大量に出る尿に見合うことがなく、尿の量は飲んだ水の量を超える。患者は尿を作ることも、水を飲むことも止めることができない。(タッタサル)

この病気は、サイフォンを意味するギリシャ語から "diabetes" と名付けられたように思える。なぜなら、液体は身体の中に留まることがなく、身体を梯子(はしご)のように使うからである。(ヘンシェン)。


「dia は〜を通して」、「betes は行く」 を示します。”diabetes” は「留まらずに通り抜ける」という意味の言葉です。「飲んだ水が変化を受けずにそのまま尿になる」という考えは、ガレノスの著述にも出てきます。梯子(はしご)は「人は梯子の下から上へ移動するが、梯子はそのままそこに残っている」という意味です。いきなり梯子がでてきてビックリしますが、ギリシア語の糖尿病と梯子は語根が共通です。なおサイフォンをギリシア語辞典で引くと、ディバイダー、コンパスなどが出てきます。2つを繋ぐ連結管のイメージで良いと思います。


平成27年2月23日

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