院長ブログ一覧

糖尿病の歴史28 ランゲルハンス膵島の発見

膵島(ランゲルハンス膵島)は膵臓にある内分泌器官です。膵臓の海に浮かぶ島という連想から膵島と名付けられました。膵島からインスリンが分泌されます。

膵島はパウル ランゲルハンス(1847-1888)が学生時代に発見しました(1869)。彼は小さい時から頭がよく、グラウエス クロスター学校(中等教育機関)で飛び抜けた成績を示し、最終の口頭試問を免除されています。彼は医学の勉強をイェーナ大学で始めましたが、膵臓観察はベルリン病理研究所で行っています。1867年夏に膵臓研究を始めますが、医学部賞を得るために研究を1年間中断します。医学部賞(神経皮膚疾患における知覚小体の研究)をとった後、1868年秋に研究を再開し、翌年1869年2月に「膵臓の顕微鏡的解剖への寄与」と題する学位論文を発表します。彼の論文につけられたコメントには、「彼の結論をみると新しいことは何ら発見していない、この論文に至った彼の努力を見てほしい」とあります。しかし、その論文の中に膵島を見つけたことが記されています。


膵臓には外分泌腺中に島状に分布する直径0.12-0.24mmの独立した組織塊がある。そこは周囲より豊富に神経が集まっている。働きはわからない。リンパ節かもしれない。


ランゲルハンス膵島以外にも、彼の名前を冠したランゲルハンス細胞があります。それは皮膚にある樹状細胞で、ランゲルハンスが1868年に発見しました。彼はその形から神経細胞と信じましたが、免疫に関係する細胞です。


平成27年10月20日

糖尿病の歴史27 19世紀頃の糖尿病

時代は200年ほど飛びます。19世紀頃の医学〜糖尿病はどのようだったでしょうか。

19世紀初頭から病理学が発展します。病理学は病気で亡くなった人を解剖して病気の原因を探りますが、 病理学では糖尿病の原因はわかりませんでした(当時は肉眼での観察です)。19世紀半ばに細菌学が勃興します。「糖尿病の原因は感染」と考えた人がいましたが、間違いでした。

生理学に新たな発見がありました。これまで「糖は植物由来、動物は糖を作ることができない。血液中の糖は食後のみ、あるいは糖尿病のような病的状態でしか認められない」と考えられていましたが、動物も糖を作ることが分かってきました

クロード ベルナール(1813-78)は (1) 飢餓状態でも動物の血液中に糖が存在し、(2) 肝静脈の血糖は門脈よりもっと高濃度であることにびっくりします。血液は、消化管→門脈→肝臓→肝静脈の順に流れます。肝静脈血の方が門脈血よりブドウ糖が濃いということは、肝臓が糖を分泌していることに他なりません。そして肝臓にグリコーゲン(分解するとブドウ糖になる)が存在することを発見します。

当時、糖尿病は不安定な精神、過剰な情欲と関連して発症すると考えられていました。糖尿病は頭脳労働者に多い。人ほど複雑な心を持たない動物は糖尿病が少ない。ベルナールは大脳第4脳室を刺激すると肝の糖産生が増加することを発見しました。そして「糖尿病は頭の病気」と結論します。

ベルナールは膵液の消化作用を発見した人としても有名です。


平成27年10月2日

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