院長ブログ一覧

週に数回の食事療法

食事療法の基本は適正なカロリー摂取です。毎日続けるのが原則ですが、週に数回、強めのカロリー制限を行う方法が提案されました。実験的な食事療法ですが、これまでの食事療法と比べて悪くないという成績です。2つ論文が出ています。

最初の論文(JAMA 2018)は、
(1) 1200〜1500kcalを毎日
(2) 500〜600kcalを週2日、〜2100kcalを週5日
の2群を比べたものです。1週間あたりの総カロリーは2群でほぼ同じです。

137人(平均61歳、BMI36.0、HbA1c 7.3%)がこの研究に参加し、97人が12ヶ月間の食事療法を完了しました。

参加者の中には、2割の人ですが、SU剤やインスリンを使っています。この人たちはカロリーを強く制限しますと、低血糖を起こすリスクがあります。そこでカロリー制限の強い日の服用量やインスリン単位数を減らす相談を前もって行い、また自分で測定した血糖値が低い場合もすぐに相談して、低血糖リスクを下げています。

HbA1cは (1) 群で -0.5%、(2) 群で-0.3%と両群とも下がり、両群間に有意な差はありませんでした。体重減少は、(1) 群で -5.0kg、(2) 群で -6.8kg 下がり、両群間に -1.8kgの差がありました。脂肪量減少の両群差は -1.3kg、除脂肪体重減少の両群差は-0.5kgでした。体重変動はばらつきが大きいため、残念なことに両群間で有意差が出ませんでした。本文中には300人くらいの規模の研究への期待(検出力が上がる)が書かれています。

2つめの論文(BMJ Case Report 2018)は、わずか3人の症例報告です。インスリンを70単位以上使っている人が対象で、隔日にあるいは週に3日強いカロリー制限(夕食のみ摂取)を行いました。全例とも〜10kgの減量に成功し、インスリン注射が不要になりました(2例が飲み薬も不要、1例が飲み薬1剤のみ)。

2つの論文は週に数回程度の強いカロリー制限が有効である可能性を示しています。毎日のカロリー制限がストレスになる人には、間欠的ダイエットの方が続けやすいかもしれませんね。

なお、両論文とも医師と十分に相談した上で行っています。慌てて行わないようにして下さい。


平成30年11月19日

炭水化物の割合は50-55%が最も長生き

昨年発表された論文で、ぎょっとするものがありました。それはPURE研究の論文(Lancet 2017)で、「炭水化物の摂取が多くなると死亡が増える」と結論されていました。

しかしよく読みますと、死亡が増えるのはかなりの高炭水化物食で、全カロリーの60%以上が炭水化物の場合でした。死亡が最も少なかったのは炭水化物が50%台の食事でした。

この8月に欧州心臓病学会が開かれました。その学会でPURE研究の最も健康的な炭水化物の割合(PURE Healthy Diet Score)が発表され、その値は54.0%でした。日本の糖尿病食の推奨割合は50-60%ですので、長寿食と言えそうです。

同じくこの8月にARIC研究が発表されました(Lancet 2018)。ARIC研究は米国の4つのコホート(研究対象集団)で行われた研究で、15,428人(45–64歳)を25年間観察し、6,283人が亡くなられています。

ARIC研究でも「炭水化物 50-55%」の人が最も死亡が少ないという結果がでました。PURE研究と合わせて検討していますが、2つの研究の死亡曲線はきれいに重なります。炭水化物の割合が40%未満(リスク1.20)、あるいは70%以上(リスク1.23)は死亡が増えるため避けた方が良さそうです

低炭水化物食にするとどうしても動物性食品が増えます。この状況が良くないようです。どうしても炭水化物を減らしたいなら、減らした分を野菜、ナッツ、ピーナッツバター、全粒パンなど植物由来の蛋白や脂肪で補って下さい。植物性食品を増やした低炭水化物食では死亡が増えません(リスク0.82)。


平成30年9月8日

PREDIMED研究の論文修正

以前にPREDIMED研究(NEJM 2013)を紹介しましたが、データの集め方に問題があり、解析方法を修正して再発表されました(NEJM 2018)。数字を捏造したのでないので論文修正が認められたのでしょうが、本来、あってはならないことです。

PREDIMED研究は地中海食、特にオリーブオイルやナッツ類の効果を調べた研究です。ランダム化研究だったのですが、「ランダム化して割り当てる」作業をしなかった施設がありました。このランダム化というのは、食事療法を割り当てる時に「偏りがない」ように割り当てることです。

手順に違反していたのは施設B, 施設Dです。その他に家族425人も含まれます。家族というのは、同じ家庭に属する2人目の人です。食事療法の研究ですので「食事を共にする同じ家庭の2人に異なった食事療法を割り当てる」ことができません。そのため、2人目の登録をランダム化せず、1人目と同じ食事を割り当てていました。この割り当て方が手順違反です。

ランダム化研究でなくなりましたので論文の質評価は少し落ちますが、幸い結論は同じでした。

旧論文で、
心血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、心血管死)リスクが
  地中海食オリーブ油群で0.70(0.54-0.92)、
  地中海食ナッツ群で0.72(0.54-0.96)に減少でしたが、

新論文でも、 
  地中海食オリーブ油群で0.69(0.53-0.91)、
  地中海食ナッツ群で0.72(0.54-0.95)でした。

またランダム化しなかった1588人を除いても同様の結果でした。地中海食は健康に良さそうです。


平成30年8月1日

現代の狩猟採集民の食事は地域の都合で決まっている

現代の狩猟採集民の食事を分析した報告があります(Am J Clin Nutr 2000)。それによると、彼らの食生活は住んでいる地域によって大きく違っていて、現代人の食事療法の参考になるものはありません。

高緯度になるに従って植物性の摂取量が減少し、狩りや漁業に依存するようになります。これは得られる食材の変化によるものです。ツンドラ地帯では永久凍土が地下に広がっていて樹木が育ちません。この地域に住む狩猟採集民では、植物性食材はわずか1割に過ぎず、狩りによる動物性食材が4割、漁業による食材が5割を占めています。一方、低緯度の熱帯〜亜熱帯では植物がよく育ちます。この地域の狩猟採集民族では、植物性食材が4割と多くなり、狩りによる動物性食材が3〜4割です。炭水化物の摂取量は、南北緯度11-40度内の地域でほぼ一定(全摂取エネルギーの30-35%)しています


平成30年4月23日

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